文化逍遥。

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深沢七郎著『笛吹川』2011年講談社文芸文庫

2018年01月26日 | 本と雑誌
 深沢七郎が73歳で亡くなったのは1987年。なので、すでに30年以上の歳月が流れたことになる。その存在を知らぬ人も多くなったことだろう。
 わたしは学生時代に『楢山節考』を読んで、最後の場面で涙が止まらなかった事を今でも鮮明に覚えている。1970年代の終わり頃だったと記憶している。その『楢山節考』が、第1回の「中央公論新人賞」を受賞したのが1956年。深沢七郎が42歳の時のこと。そして、この『笛吹川』が中央公論社から刊行されたのが、1958年。今回、図書館から借りて読んだのは2011年講談社文芸文庫から復刻されたものになる。



 武田信玄の誕生から勝頼の死ぬまで、激動の時代に翻弄される笛吹川沿いに暮らすある農家6世代を描いた小説。深沢七郎は、現在の山梨県笛吹市出身なので、自らの郷里を舞台に設定した作品、ということになるだろう。
 良い小説を読んでいると、時間の流れがゆっくりしてくるように感じる。これを読んでいる時、舟で川を下っていて急流を過ぎ川幅が広いところに出た時に似た感覚をおぼえた。時間をかけて書かれた作品とは、そういうものなのだ。手作業の大切さを、改めて実感させてくれた。便利な道具を使う時には、それが本当に必要なものなのか、立ち止まって考えたい。

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