King Diary

秩父で今日も季節を感じながら珈琲豆を焼いている

撃ちっ放しの弾と当った弾について

2009年09月10日 13時30分14秒 | 日々のこと
これは『1Q84』も『時間封鎖』も読んでいない人は
読まないほうがいいかもしれません。

特にこれから読もうとしている人は。

フラクタルとかマンデンブローとかそんな図形が
自然界に出来るのは無生物でありながら生物が誕生する
秘密に共通するという試行がありました。

そんな意味で、私は時間封鎖を読み、仮定体とする
謎の宇宙意識のようなものが行おうとしたことと、
1Q84にでてくるパッシバとレシヴァと同じだと思った
のです。

つまりこれが弾の当ったところ。

宇宙では、全方位からある周波数の電磁波が飛んでくる
といいます。

この謎の電波はやがてビックバン理論の重大な証拠と
されるのですが、仮定体の神経ネットワークとはまさに
この背景放射のようなものではないでしょうか。

さて、神ならぬ身が神になろうとしたときにやろうとする
ことは、自然界で一般行われている種の保存であり、その
ための自己犠牲などDNAに刻まれた行動はこのフラクタル
製作だと思います。

それがなす先として宇宙においても人類の英知を後世に
残したいと人類の到達した文明の証として自己複製を
当然考えると思うのです。

そのためのフラクタルを続け宇宙の中の文明の複製を
作るとしたら、仮定体に限らず、人類も高度な文明も
知的生物としての欲求は自己複製という渇望になり、
その手段が編み出されそれが時間封鎖であり、仮定体の
意思であり、パッシバでありレシヴァであると。

映画『2001年宇宙の旅』での話と同じです。

あの映画も結局人類のなさんとしたことは、自己複製
なのに、実際には太陽系外に自己文明のアーカイブを
発射するという行動で実際の宇宙計画でもこれは行われ
宇宙と交信するプロジェクトも実際に行われています。

しかし、考えるべきは、やがて起こる50億年後に
太陽が膨張し白色矮星へ変わるその時に人類として
文明の到達点や知識の到達点をどう保存するかで、
宇宙に飛び立つとか他の惑星に移住するなどという
ことではないのです。

そう考えた時に、当然かつてそう考えた人たちが
いたはずだということも考えが至れば、まずは宇宙を
結ぶ神経細胞のような情報網も当然考えつくし、宇宙と
つながりを持つ方法の構築も考えも及ぶというものです。

まさにそれが真理であり、それを理解するとは連綿と続く
かつて残されたであろうフラクタルの発掘であり接続
だと思います。

時間封鎖を読み終わったときに、この小説が三部作の
最初で次の作もすでに翻訳されていることを知り
すぐに注文しました。

第三作目は、題は出来ているものの上梓されたという
情報は昨年のこの本が出た時点ではないとのことです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

これはいい『時間封鎖』

2009年09月10日 09時28分45秒 | 読書

アメリカのTVドラマとか映画とかの特徴は
とにかく正義は圧倒的に正しく、強く、かなり
困難な状況に追い込まれつつ、そして最後は
勝つというパターンが定着していて、それ以外
の要素が入り込む余地がないほどになっていると
感じていました。

ふと3年前の自分のブログを読み興味深いことが書かれて
いました。

『LOST』とか『ER』とか最近のドラマは主人公が
負け続け失い続ける物語となっているということです。

リーマンショック後の今は、もっと簡単にもっと白黒
はっきりしていて、とにかく正義は勝つというものに
変わっているのか。

昔からアメリカ映画は、アクションと能天気に正しく
勝つ強いヒーローばかりでした。

そんな世界に、毎週同じ時間にチャンネルを合わせる
だけの魅力を持たせられるはずもなく、編み出された
のが、謎に満ちた島や過去の失敗や人生の失敗から
現在に導き出した生きる知恵だったり、決断だったり
クリントイーストウッドなどは愛の形としての生だったり
したわけです。

アメリカでも映画をあれだけばかばかしい内容に塗りこめ
ていても、文化であり芸術だとする人がいてデートに
誘う第一の目的に映画に行こうと言う台詞が多く聞かれ
ます。

そんなアメリカ世界に文学で人々を魅了し人生の深遠を
覗かせてくれるものなど育とうはずもないと思って
いました。

しかし、SFだけは飛び切りに面白く、人生の謎と世界の
謎に突き詰めてもしやこういうことではと現実の世界も
考察させるものが数多くあります。

この本もまさにそんな一冊で、私はヒューゴー賞受賞と
いうことと帯にあるSFが読みたいベストSF第1位という
キャッチに触発されたのですが、まさかここまでという
意外感に包まれました。

よく人類の最後を描く小説はありますが、コーマック
マッカーシーのように大絶賛された本でもただ人類が
核戦争を起こしてしまい、生き残った人類のサバイバル
だったり、というありそうだけどどうしてそうなってその
次どういう世界が展開されるのかという小説はなかった
のです。

その中で、時間封鎖は太陽が膨張し地球を飲み込んで
しまう人類最後の時を描いており、その時何が起きて
何がどうしてしまうという意外なドラマです。

それでありながら、不思議な臨場感に満ちていてありえない
世界がその不思議な現象の謎を見極めたいという欲求の
ままにドラマは進行し、人類の最後はこうかもしれないという
同意感でつつまれます。

今でも話題の『1Q84』の打ちっぱなしの弾のような物語
と違い、打った先、つまり着弾点がはっきり見えるような
そしてその打った先の一つがこの1Q84のひとつにもあたって
います。

久しぶりの読書の醍醐味を味わえた本でした。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする