金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

309:高橋克彦『時宗 巻の四 戦星』

2022-12-10 18:41:49 | 22 本の感想
高橋克彦『時宗 巻の四 戦星』
 
【Amazonの内容紹介】
 
蒙古軍襲来! 圧倒的迫力で描く完結編!
ついに蒙古が来襲した。
対馬沖に現れた3万数千人の大船団。
国の命運を賭け、執権・時宗は父・時頼の遺した途方もない秘策に出た。
兄・時輔らが率いる九州武士団を軸に、日本軍は蒙古軍と激闘を重ねていく。
誰のため国を守るのか。
国とはなにか。
歴史の転換期を生きた男たちを圧倒的迫力で描く怒涛の完結編! 
 
****************************************
 
精神的に、人が死ぬ話を読める状態ではなかったので、
ところどころ飛ばし読みした。
よって、今回は★はなし。
 
ついに蒙古襲来。
時輔を生き延びさせたのは、もう一人の主人公として
彼の視点で元との戦いを描くためだったとわかる。
時宗は鎌倉から動かないから、やむを得ないよね。
1・2巻は時頼、4巻は時輔が中心なので、
タイトルに偽りあり、という感もあるけれども、
ぜもやっぱり主役は時宗だよな~。
 
元寇について、教科書では
「二回襲ってきたが、台風で元軍がめちゃくちゃになった」
くらいの扱いだったと思うが、対馬をはじめ、
九州地方ではかなりの被害が出ているんだよね。
「女は手に穴をあけられて、数珠つなぎにされて連行された」
って話、何度目にしてもぞっとする……。
 
時宗はずっと鎌倉にいたから、自ら戦いもせず、
家族を失ってもいないのだけども、
まだまだ若いのに、実質的なトップとして
未曾有の国難に対処しなければならなかったのだから、
ストレスの相当なものだったよね……と早死にには納得。
 
『アンゴルモア』の続きが、読みたくなってきた。
 
『炎立つ』ファンとしては、たびたび安倍氏が絡んでくるのは
嬉しいけれど、この時代にはもう、その存在というか血筋は
そこまで重く見られてなかったんじゃないかな?
 

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308:高橋克彦『時宗 巻の参 震星』

2022-12-10 18:24:40 | 22 本の感想
高橋克彦『時宗 巻の参 震星』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
幕府の重鎮・北条時頼が世を去り、
不気味な長い尾を引く彗星が空を流れた。
一族内の暗闘、将軍との対立。
重なる試練が若き時宗を襲う。
一方、海を越え届けられた1通の国書。
すでに高麗を手中にしたクビライの狙いはこの国に定まった。
いかに国をまとめ、大蒙古軍を迎え撃つか。
あとのない戦いがはじまる。
 
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ようやく系図がついた!!
 
厚さが気にならないくらい面白いんだけども、
面白いと思うのは、この作品に描かれた部分の
前の時代を知っているからというのもあるかもしれない。
政村が老齢にして執権になるあたりも、
義時死後のいざこざを知っているからこそ
「胸が熱い!」になるのだし、
政村の重時に対する対抗意識も、
敵対勢力と接近しがちな名越流の動きも、
さもありなんと思える。
 
以前本で読んだ宗尊親王の更迭のくだり、
 
「親王の御台所の近衛宰子(時頼の養女)が僧と密通
→宗尊親王が更迭される」
 
の流れが「なんでそうなる???」だったのだけども、
この作品では納得のいく流れがつけられていてよかった。
 
時輔は表向きは死んだことになっているが、
実は生きていたという設定。
わざわざこうした理由は、四巻でわかった。
 
 

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307:山内マリコ『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』

2022-12-02 20:54:28 | 22 本の感想
山内マリコ『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』
★★★☆☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
1970年代、シンガーソングライターとして
十代でデビューを飾った荒井由実。
のちに日本最大の女性ポップスター、
松任谷由実=ユーミンとなる煌めく才能は
いかにして世に出たか――。
八王子の裕福な呉服店に生まれ、ピアノに触れ、
清元を学び、ミッション系の私立女子校に入学。
グループ・サウンズが一世を風靡するなか、
由実は高度経済成長期の東京を、
好奇心いっぱいに回遊しはじめる。
米軍基地、ジャズ喫茶、ミュージカル『ヘアー』、
伝説のレストラン キャンティetc.……
次々に新しい扉を開けて、才能を開花させていく。
少女・荒井由実のデビューまでの軌跡を
ノンフィクション・ノベルとして描き出す。
名曲「ひこうき雲」が生まれるまでーー
 
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先輩から借りた本。
「昭和が懐かしい」と言って貸してもらったのだけど、
わたしは昭和は最後の10年しか体験しておらず、
しかも子どもだったので、
本当にちゃんと記憶があるの、5年分くらい。
ここに描かれた音楽シーンも、
もはやそのかすかな残滓しか感じ取れなかった世代なんだよね。
沢田研二も、ムッシュかまやつも、全盛期を知らないものだから、
「なんでこのおじさんたちが
 大人たちにキャーキャー言われてるんだろう……」
とずーっと思ってた!
 
自分が生まれる前の日本、日本の音楽シーンってこんなふうだったのだなあ。
ユーミンはものごころついたときから普通にいたので、
意識したことがなかったのだけども、
彼女の何が画期的だったのか、これを読んで初めてわかった。
 
小説としておもしろいかといったら疑問で、
「このエピソード、いる??」
と思うことがいっぱいなのだけども、
ユーミンファンはもちろん、この時代の音楽を愛していた人たちは
楽しめるんじゃないかな。
 
作者の山内マリコさん、わたしとほぼ同世代なのだな。
 

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306:ほしおさなえ『金継ぎの家 あたたかなしずくたち』

2022-11-24 20:01:57 | 22 本の感想
ほしおさなえ『金継ぎの家 あたたかなしずくたち』
★★★★☆3.5
 
【Amazonの内容紹介】
 
高校二年生の真緒と暮らす祖母・千絵の仕事 は、
割れた器を修復する「金継ぎ」。
進路に 悩みながらもその手伝いを始めた真緒はある日、
引き出しから漆のかんざしを見つける。
それを目にした千絵の困惑と故郷・飛驒高山 への思い。
夏休み、二人は千絵の記憶をたど る旅に出る――。
選べなかった道、モノにこめ られた命。
癒えない傷をつなぐ感動の物語。
 
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消えつつある文化に目を向けて、
それを守ろうとする人々の姿を描いている点は、
「活版印刷三日月堂」シリーズや
「紙屋ふじさき記念館」シリーズと共通している。
ただ、思ったより「金継ぎ」そのものには
重きが置かれていなかったという印象。
たぶん、タイトルから想像するに、
メインは金継ぎではなく、
「ままならない人生や家族の修繕」だったのだろう。
 
夫の浮気――しかもその理由が、
浮気相手の「優しさ」と生活を切り回している妻の「優しくなさ」――、
ストーリー上ではありふれた苦難なのかもしれないが、
おそらく全世界で幾度となく繰り返されてきた、
解消されない苦しみなのだなあ。

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305:高橋克彦『時宗 巻の弐 連星』

2022-11-19 14:46:22 | 22 本の感想
高橋克彦『時宗 巻の弐 連星』
★★★★☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
磐石の執権政治を確立し、幕府の結束を固めた北条時頼。
だが、巨大騎馬国家・蒙古の王クビライが、
海を越えこの国を狙う。
かつてない戦さがはじまろうとしていた。
天変地異続く巷では、法華経を説く日蓮が民の熱狂を呼ぶ。
父の志を受け、真に国をまとめる者となれ。
少年・時宗は若き棟梁として歩み出した。
 
****************************************
 
藤原道家暗殺と蒙古の脅威、日蓮の登場。
この巻は時頼の死で終了。
 
有力御家人をあらかた葬り去っても、内ゲバは続く。
執権に短命の者が多いのは、
やっぱり激務なのとストレスがすごいからなのかな。
時宗なんか、蒙古と戦うためだけに生まれてきたのではないかと
思えるような、生涯の短さだもの。
 
天皇家からその補佐をしていた藤原氏へ、
権力が武士に移っても、将軍から、その補佐をしていた執権へ、
さらにその補佐をしていた御内人へ……と
権力がしばらくするとナンバー2に移っていくの、
なんだか不思議だなあ。
そして、摂家将軍も親王将軍も、成長して自我を持ち始め
邪魔になるとすぐ廃してしまう鎌倉……
 
まだ十歳で、父親に食ってかかり、
怒ったり泣いたりする時宗、可愛いね……。
兄・時輔を慕い、兄を差し置いて
自分が後継者扱いされていることを気にしているの、
後々のことを思うと傷ましい。
 
やっぱり系図がほしい!

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304:アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』

2022-11-18 15:01:35 | 22 本の感想
アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』
★★★☆☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
優しい夫、よき子供に恵まれ、
女は理想の家庭を築き上げたことに満ち足りていた。
が、娘の病気見舞いを終えてバクダードからイギリスへ帰る途中で
出会った友人との会話から、それまでの親子関係、夫婦の愛情に
疑問を抱きはじめる……
女の愛の迷いを冷たく見すえ、繊細かつ流麗に描いた
ロマンチック・サスペンス。
 
****************************************
 
長い間積んであったもの。
ようやく読んだ。
ネタバレするけど、すでに古典といっていいくらいの作品だから
いいよね。
 
 
身につまされてつらい……。
 
自分が周りの人々を愛し、彼らのためを思って尽くし、
愛され、必要とされていると信じていたのに、
自分の愛は欺瞞であり、皆を苦しめ不幸にし、
皆から嫌われていたのだと気づいてしまったヒロイン。
その事実に気づくヒントはたくさんあったのに、
全力で目を背けていたのが、旅の途中のトラブルで
いやおうなしに自分と向き合うことになって、
その事実に気づかざるを得なくなる。
 
ヒロインにとっては、その気づきは、
人生をがらりと変えるくらいの大きなものだったのに、
夫と顔を合わせたときに、結局、
それを気の迷いとしてなかったことにしてしまったのが、
またねえ……。
この選択が、理解できるだけに、やるせない。
「変えること」よりも「変えないこと」のほうが
遙かに楽だもの。
 

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303:河村恵利『時代ロマンシリーズ4 五徳春秋』

2022-11-15 23:08:34 | 22 本の感想
河村恵利『時代ロマンシリーズ4 五徳春秋』
★★★☆☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
織田信長の長女・お徳は
徳川家康の長男・信康に嫁いだが…。
数奇な運命をたどる青春群像。
 
****************************************
 
この巻も紙で持っていたのだけども、
「五徳春秋」と「夢路さそい」しか記憶がない。
5巻以降を購入していなかったのは、
このころ、歴史から関心が逸れていたため。
 
築山殿と徳姫の関係を描いた「五徳春秋」がやるせない。
築山殿や淀殿みたいな悪女とされている女性を
善良で優しい人として描いているところが
このシリーズの好きなところの一つ。
(日野富子は悪女のままだけど、これはこれでよい)
 
織田信忠が本能寺の変の前に、出家した元許嫁の松姫と
会う約束をしていたエピソード、いろいろと想像が膨らむね……
 
【収録作品】
 
「五徳春秋」築山殿と徳姫
「咲くやこの花」信長と濃姫
「夢路さそい」信長と於市
「乱れ髪」武田勝頼とその継室
「花散る里」蒲生氏郷と冬姫
「よみのくに」織田信忠と松姫
 
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298-302:最近読んだ本(ほぼ記録のみ)

2022-11-14 11:07:42 | 22 本の感想
『時空旅人 別冊 鎌倉殿 源氏三代と13人の武士』
 
義時と泰時を間違えてるよ……
 
 
森幸夫『北条重時』
 
重時、経時に冷淡だな……と思ったけど、
たぶん、ずっと京都にいたから接点なかったんだな。
後に時頼が接点のなかった重時を鎌倉に呼び寄せたことについて、
安達が仲立ちしたのだろうと別の本に書いてあったし。

 平山優『戦国大名と国衆』

笹本正治『戦国大名の日常生活』

 

三條凜花『時間が貯まる 魔法の家事ノート』
 
家事って、本当に「どこまでやるべきか」が
人によって違うんだなあ。
きっちり家事をやりたくて、なおかつ書くことが苦にならない
まめな人向け。
わたしは書くことは好きだけど、
家事はそこまでやらなくてもいいと思っているタイプ。
 

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297:浅倉卓弥『黄蝶舞う』

2022-11-14 10:35:50 | 22 本の感想
浅倉卓弥『黄蝶舞う』
★★★☆☆
 
【Amazonの内容紹介】
 
真夏の母娘の光景を切り取った「空蝉」。
初代将軍頼朝にまつわる因縁を描いた「されこうべ」。
修禅寺物語に想を得た「双樹」。
そして鶴岡の惨劇を軸に対を為す、
殺される側実朝と殺す側である頼家の遺児公暁の
それぞれの生涯をたどった「黄蝶舞う」と「悲鬼の娘」。
各々が独立した作品として成立していながら互いに複雑に絡み合い、
やがて妖しくも美しき闇の世界を映した絵巻を織り上げていく。
確かな筆致に支えられた異色の歴史連作集。
 
****************************************
 
読み終わるまで非常に時間がかかった。
 
たとえば「されこうべ」の
 
・頼朝の母は熱田神宮の宮司の娘→草薙剣→髭切
・文覚→ドクロ→真言立川流
 
の連想なんかとってもおもしろいと思うんだけど、
アイディア自体はよくてもストーリーが……。
岡本綺堂や永井路子の先行作品を参考にしました!
と素直に書いてるところは好ましいのだけど、
そのせいか、5編のうち4編は、
新規性がほとんど感じられなくて、
しかも説明に終始している感じがあってつらい。
初めて読む「鎌倉もの」がこれだったら
面白く読めたのかもしれないけど、
歴史小説が好きな人の大半は、やはり
「これまでとは違う描き方」を求めると思うのでね……。
 
ラスト、公暁を主役にした「悲鬼の娘」はよかった。
個人的には、後鳥羽院が実朝を殺しても何のメリットもないどころか、
デメリットだらけだと思うので、朝廷黒幕説にはうなずけないのだけど、
「将軍になりたいわけでもなく、
 実朝を深く憎んでいるわけでもない公暁」
は新鮮だった。
 
 

 
 
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296:河村恵利『時代ロマンシリーズ3 冬の落日』

2022-11-11 18:47:02 | 22 本の感想
河村恵利『時代ロマンシリーズ3 冬の落日』
★★★★★
 
【Amazonの内容紹介】
 
源平争乱の時代。
栄華を誇った平氏一門を京の都から追放した木曾義仲だが?
時代ラブロマン集。
 
****************************************
 
この巻も紙で持っていて、
「闇の華」以外は全部覚えている。
楠木正行と弁内侍のエピソードは、
その漫画で知ったのだった。
「夜の名残」はオリジナルだと思っていたんだけど、
下敷きになる伝説や歌舞伎が存在するのね。
伝説では大宅光圀は陰陽師だったらしいけれど、
ここでは歌舞伎の設定と同じく源頼信の家来。
 
【収録作品】
 
「冬の落日」源義仲と源義経
「夜の名残」滝夜叉姫と大宅光圀
「たそがれ時の…」在原業平と藤原高子
「銀の華」日野富子
「笛の音色」楠木正行と弁内侍
「闇の華」小早川隆景と早川鮎之介
 
 

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