金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

86:今野真二 『学校では教えてくれない ゆかいな日本語』

2017-09-30 19:34:35 | 17 本の感想
今野真二 『学校では教えてくれない ゆかいな日本語 (14歳の世渡り術)』(河出書房新社)
★★★★☆4.5

【Amazonの内容紹介】

イライラのイラって何?
サワサワとザワザワ、どう違う?
人一倍って何倍?……
遊び心に満ちた、ゆかいな日本語の世界へようこそ!

*************************************

この本を読んで初めて知ったことが多く、大変ためになった。
「しっとり」と「じっとり」、「しとしと」と「じとじと」等、
清音と濁音を比べたときに、濁音を含んだ言葉のほうが
不快を感じさせるのはなぜなのか?
「はひふへほ」がかつて「ファ フィ フ……」と発音されていたことは
どうしてわかったのか?
……というような日本語の特徴や歴史の解説が多いのだけども、
回文や創作漢字、折句など、言葉を使った遊びも紹介されている。
中学生向けのシリーズなので文章は平易。
読みやすい文章で知的好奇心を満足させてくれる。おすすめ!

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85:姜尚中 『ニッポン・サバイバル―不確かな時代を生き抜く10のヒント』

2017-09-29 22:53:23 | 17 本の感想
姜尚中 『ニッポン・サバイバル―不確かな時代を生き抜く10のヒント』(集英社新書)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

いじめに苦しむ子どもたちや、悩みを抱えた大人たちなど、
毎年、三万人以上が、自殺に追い込まれている。
そして本当に怖いのは、この社会で共に生きる他者への無関心と、
無慈悲さの蔓延だ。
「悪人」だけが跋扈しているわけでもないのに、一体なぜなのか。
また、相談機能を失ったこの社会で、
どこにも逃げられず、頑なにもなりきれないフツーの人たちは、
どうしたら漠然とした息苦しさから解放されるのか?
注目の政治学者が、幅広い世代から寄せられた声に誠実に向き合い、
この国でしたたかに、しなやかに生き抜くための方法論を提示した、
現代日本の必読書。

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一時期、仕事で著作をよく読んでいたなあ……と
積みっぱなしになっていた本を読んだ。
10年前に出版された本なので、
最初は何の事件について書かれているのか
わからないところもあったのだけども、
読み進めると徐々に当時の事件を思い出す。
そして、10年たった今でも、なるほどと思えることが
非常に多かった。

以下、個人的なメモ。

・お金の儲け方はいろんなところで教えてくれるが、
 使い方は教わっていない
 →ブランド信仰、消費に走る

・自由か不自由かは、その人が何に価値を見出して
 何を無価値と感じるか、ということで大きく変わってくる

・近代とは、労働こそが人間にとって素晴らしいものだと考える社会

・第三次産業が多い→仕事に手ごたえを感じにくい

・結局、その人の人間的な価値にふさわしい友達しか持てない

・リアルとの接触なしには、どんなものでも学びたいという
 動機付けは生まれにくい

・「無駄なことをしないと、そうでないものもわからない」

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84:武光誠 監修 『神社とは何か? お寺とは何か?』

2017-09-29 22:37:20 | 17 本の感想
武光誠 監修 『ペンブックス4 神社とは何か? お寺とは何か? (Pen BOOKS)』(CCCメディアハウス)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

深い緑に囲まれた神社に流れる、清らかな“癒し"の空気。
しんと静かなお寺での、身の引き締まるような時間……。

価値観の揺れ動くいま、日本文化の源流のひとつとして、
これらの「聖域」が人々を惹きつけるのは決して偶然ではない。

だが私たちは、きちんと理解しているだろうか?
神社とお寺の違い、それぞれの歴史やルーツ。
日本の神話や、ブッダの教え。
さらに、心に響く必見の仏像から、いま訪れるべき寺社まで。

神社とお寺の「すべて」をここに明らかにする。
日本文化の源流を訪ねて~一度は訪れたい、全国神社仏閣マップ~

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「ああ、そうだったのか!」という驚きはなかったけれど、
「言われてみれば……」と思える内容が多かったかな。
寺は、大陸に由来する建築として瓦を使っているけど、
神社は茅葺や檜皮葺で瓦は使用しない、とか。

それぞれの歴史や特徴、聖職者たる僧と宮司の一日など、
あまり意識していなかったところまで扱ってくれているので
興味深く読了。

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83:小泉和子 『昭和の結婚』

2017-09-28 13:17:00 | 17 本の感想
小泉和子 『昭和の結婚 (らんぷの本)』(河出書房新社)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

相手の顔を知らぬまま嫁ぐ花嫁。
気に入らない!と理由も告げられぬまま離縁される新妻。
相次ぐ、心中事件の悲劇…。
結婚とは「家」と「家」のものだった時代、
女性にも男性にも自由はなかった。
昭和の結婚の諸相を描く、画期的な1冊。

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仕事の資料。
知らなかったことが多くて面白かった。
神前式の歴史は意外と浅く、明治期に入ってからだとか、
ホテル挙式の登場はもっと遅く、
常設の挙式場ができたのは関東大震災以後だとか。
この本にも取り上げられていた「菓子撒き」の風習、
わたしが子どものころには普通に残っていたのだけども、
今もやってるのかしら。

「花嫁の心得」のページ、登場するのが美男美女で
なおかつ品がいいので、
古き良きうつくしい世界と言った感じだけど、
これを今要求されたら、
「旦那ひとりの稼ぎじゃ生活していけないんだよ!!
 こんなことやってられっか! ふざけんな!!」
と大ブーイングだろうな。

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82: たかぎなおこ 『はらぺこ万歳!』

2017-09-28 13:00:11 | 17 本の感想
たかぎなおこ 『はらぺこ万歳! 家ごはん、外ごはん、ときどき旅ごはん』(文藝春秋)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

何かおいしいものが食べたい~!
適当自炊も外食もワクワク旅ごはんも、思わず笑顔のおいしさです!

子どもの頃から食いしん坊。
普段は適当自炊にちょいちょい外食で、お酒もたしなみ、
大好物もB級も珍味もペロリ。
日々ごはんから旅グルメまで大盛りの食コミックエッセイ!

適当自炊/スペシャル納豆/ヘルシー定食/思い出のお菓子/
B級冷し中華/浪花のたこ焼き/本場の明石焼き/どハマリパスタ/
憧れのピザ/産みたて卵/衝撃的な珍味/やみつき塩辛/
実家ごはん/大好き給食/やわらかうどん/そば屋飲み/青森グルメ

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気分転換本。
絵は上手じゃないんだけど、不思議な無邪気さと幸福感がにじみ出ているし、
文字での説明やリアクションによって
「おいしそう」と思わせることに成功している。
わたしはタコが嫌いで、タコ焼きも明石焼きも食べないのだけど
(タコ以外の生地や味付けは好き)、これを読むと食べたくなる。

そして、こういうコミックエッセイを何種類か読んだうえで思ったのは、
やっぱり作者の「素」を出しちゃだめね、ということ。
意地の悪さだったり、嫉妬だったり、卑屈さだったり、
ネガティブな要素を受ける方向に持っていくのは
かなりの高度な技術を要するのだと思う。
かわいらしさや幸福感が必要なのだ。

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81:藤崎翔 『神様の裏の顔』

2017-09-24 18:48:27 | 17 本の感想
藤崎翔 『神様の裏の顔』(KADOKAWA)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

神様のような清廉潔白な教師、坪井誠造が逝去した。
その通夜は悲しみに包まれ、誰もが涙した。
…のだが、参列者たちが「神様」を偲ぶ中、とんでもない疑惑が。
実は坪井は、凶悪な犯罪者だったのではないか…。
坪井の美しい娘、後輩教師、教え子のアラフォー男性と今時ギャル、
ご近所の主婦とお笑い芸人。
二転三転する彼らの推理は!?
どんでん返しの結末に話題騒然!!
第34回横溝正史ミステリ大賞“大賞”受賞の衝撃ミステリ!

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読んだのは単行本版。

聖人君子の裏の顔が、葬式で暴かれるなんて
わくわくしちゃうよね……!
という下衆な根性に訴えかけるあらすじで
つかみはOK。

各人の回想が積み重なることで、
徐々に不穏な空気が漂い始め、
疑惑が決定的になったと思いきや……!?と
読者を楽しませる驚きを何段階も仕込もうという
心意気が感じられる。
ミステリーをあまり読まないので、
構成や仕掛けをありきたりだとは思わなかったし、
新鮮な気持ちで楽しめた。
ただ、最後のオチは、
「それをやっちゃ御終いよ」といった類のものに感じられ、
印象が一気にチープになってしまった。

それでも飽きずに一気読みできたし、
作者が元お笑い芸人だというのも納得のユーモアのセンスがあって
楽しめた。
おもしろかった!

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80:友井羊 『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん』

2017-09-21 13:31:46 | 17 本の感想
友井羊 『スープ屋しずくの謎解き朝ごはん (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)』(宝島社文庫)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

店主の手作りスープが自慢のスープ屋「しずく」は、
早朝にひっそり営業している。
早朝出勤の途中に、ぐうぜん店を知ったOLの理恵は、
すっかりしずくのスープの虜になる。
理恵は最近、職場の対人関係がぎくしゃくし、
ポーチの紛失事件も起こり、ストレスから体調を崩しがちに。
店主でシェフの麻野は、そんな理恵の悩みを見抜き、
ことの真相を解き明かしていく。心温まる連作ミステリー。

*************************************

バツイチの男性に心惹かれるヒロイン(?)が
彼がひとり娘と一緒にいる様子を見て、
「家族になりたい」と思う。
そんなラストを、
「ずうずうしい」
「気持ち悪い」
と思ってしまった……。
いや、これが男性と付き合ってるんだったらわからないでもないけど、
ややプライベートな領域まで関わりつつあると言っても
店長とその店の客という立場で、恋人でも何でもないわけだからね。

朝食においしいスープを提供する料理店の店長たる男性が、
客であるヒロインやその周辺の人々の関わる「謎」を解き明かし、
冒頭で疲れ果てていたヒロインは、徐々に店長に惹かれていく……という、
はやりもののお約束みたいなあらすじなんだけど、
興味の引っ張り方がうまいし、展開にも意外性があって
人気が出るのも納得のおもしろさ。
一部、スープや料理が関係ない謎もあったけれども、
話のおおもとには、その設定なければならない必然性がきちんとあった。
何よりスープがおいしそう。

「頼まれてもいないのに、客の問題に首を突っ込む店」
という設定がもともとあまり好きじゃないので、
個人的な好み度は低くなってしまったけど、
通勤・通学のおともとして気軽に楽しく読めるし、
この系統の本が好きな人にはおすすめ。

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79:日垣隆 『知的ストレッチ入門』

2017-09-15 20:25:24 | 17 本の感想
日垣隆 『知的ストレッチ入門―すいすい読める書けるアイデアが出る』(大和書房)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

知的ストレッチ――それは、毎日のストレッチ体操で、
筋肉をしなやかに強化するように、
小さな習慣を重ねて、知力を劇的に向上させる方法です。
戦うための書斎づくりから、使える文房具の選び方、
プレッシャーに負けない決断術まで。
プロの執筆現場から体験的に編み出した方法で、
大人のアタマを刺激的に鍛え直す、新時代の〈知的生産の技術〉。
書下ろしiPhone/Twitter論を増補!

*************************************

読んだのは単行本版。
あとがきで著者自身が挙げたベストセラーと同様に、
年月が経ってこの本の「前提条件」もまた
変わってしまっているし、
仕事の内容の違いもあって
自分に関係がないと思えるパートもあったけれど、
モチベーションアップには役立った。

「才能のある人間はいいけれども、才能がなくて、
これから努力していかなければいけない人は、
終わったことの余力で食うようなことをすると、
決して成長には結びつきません」(P.131)

は耳が痛い。
せっかく知識やノウハウを得たのだから、
ひとつのネタ(分野)で、できるだけたくさんの商品・サービスを
出したい……と思っていたところだったから。


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78:河合隼雄 『泣き虫ハアちゃん』

2017-09-15 20:06:53 | 17 本の感想
河合隼雄 『泣き虫ハァちゃん』(新潮社)
★★★★★

【Amazonの内容紹介】

ほんまに悲しいときは、男の子も、泣いてもええんよ──。
城山家の、男ばかり六人兄弟の五番目のハァちゃん。
感受性が豊かなあまり、幼稚園の先生が辞めると聞いては泣き、
童謡に出てくるどんぐりの行方を案じては泣いてしまう。
家族に見守られ、友人たちと野山を駆け巡って、
力強く成長してゆく過程を瑞々しく描く。
心理学者・河合隼雄の遺作となった、せつなく温かな自伝的小説。

*************************************

わあ、これはいいなあ……!

遺作ということで読んでみたものの、仕事で何冊か読んだ
他の著作があまり好きではなかったので期待していなかった。
読んでみると、思いがけず好みで、よいお話だった。
子どもらしい未熟さを持ちながらも繊細で心優しいハアちゃんと、
彼を取り巻く家族のあたたかさに胸がきゅんとなる。
戦争の気配はあるものの、そこまで色濃くはなく、
家父長制の時代であるけれども、
リベラルで教養人らしいお父さんと品よく優しいお母さんが
子どもたちのサンタさんに対する疑惑を晴らすべく
対処するお話がユーモラスで可愛らしく、印象的。
おすすめ!


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77:森沢明夫 『津軽百年食堂』

2017-09-08 19:37:02 | 17 本の感想
森沢明夫 『津軽百年食堂』(小学館)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

百年の刻を超える「こころ」の物語

ふるさと「弘前」を離れ、孤独な都会の底に
沈みように暮らしていた陽一と七海。
ふたりは運命に導かれるように出逢い、惹かれ合うが、
やがて故郷の空へとそれぞれの切なる思いを募らせていく。
一方、明治時代の津軽でひっそりと育まれた
賢治とトヨの清らかな愛は、いつしか遠い未来に向けた
無垢なる「憶い」へと昇華されていき……。
桜の花びら舞う津軽の地で、百年の刻を超え、
営々と受け継がれていく<心>が咲かせた、
美しい奇跡と感動の人間物語。

*************************************

それだけでドラマを感じさせる表紙がいいねえ……
と思いつつ、長い間読まないままになっていた本。
というのも、以前に読んだ『青森ドロップキッカーズ』で
この作者さんとは相性がよくないと確信していたから。
明確な欠点があるわけじゃなく、単純に合わない。

その確信は当たっていた……。
お父さんと息子の関係だとか、好きなところもあったんだけど、
どうもしっくりこない部分の方が多かった。
視点人物が頻繁に入れ替わったり、過去と現在が交互に描かれたりする
構成にあんまり意味が感じられなかったのと、
主人公を好きになれず、彼女とのドラマに興味が持てなかったのとで、
ところどころ飛ばし読みしたい衝動に駆られてしまった。
過去と現在のリンクもいまいち機能していなかったように思うので、
そこにスポットをあてて描いてくれたら大好きな話になったかも。

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