金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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53:相沢沙呼 『小説の神様』

2017-04-21 19:34:21 | 17 本の感想
相沢沙呼 『小説の神様』(講談社タイガ)
★★★★☆3.5

【Amazonの内容紹介】

僕は小説の主人公になり得ない人間だ。
学生で作家デビューしたものの、発表した作品は酷評され売り上げも振るわない……。
物語を紡ぐ意味を見失った僕の前に現れた、同い年の人気作家・小余綾詩凪。
二人で小説を合作するうち、僕は彼女の秘密に気がつく。
彼女の言う“小説の神様”とは? 
そして合作の行方は? 
書くことでしか進めない、不器用な僕たちの先の見えない青春!

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初作者さん&初レーベル。
このタイトルだが、志賀直哉はまったく関係ない。

「これでもか!!」ってくらいに、作家の産みの苦しみを描いた作品。
二回くらい泣いてしまった……。
再び自分の作品と向き合えそうになったのに、
打ち切りを宣告されるシーンが辛すぎた。
作家でなくとも、自分の名前を掲げ、数字と向き合うクリエイターは、
身につまされてしまうんじゃないだろうか。

作中、何度か地の文で「ラノベかよ」とツッコミが入る通り、
ぼっち主人公、美少女転校生、病弱で兄大好きな妹に、高校生作家……と
ライトノベルの要素が濃くて、
それがシリアスな場面と乖離しているような印象を受けてしまう。
ただ、主人公とヒロインが高校生作家だというのは、
ある種の免罪符として働いているだろうから、これはこれで正解なのかな。
大人だって後ろ向きに悩み苦しむし、生活がかかってくる比重が高くなって
より苦しみは大きくなるけれども、主人公を大人にした場合、
「大人のくせにいつまでもメソメソして」
という批判が強くなる気がする。
登場人物のセンシティブな部分が、高校生だからと許容されることはあるだろうから、
これも作者の計算のうちなのかもしれない。

事前にあらすじを読んでいなかったので、
「秘密」に意識が向いていなかったのだけども、
終盤にヒロインにまつわる謎が明かされ、
ミステリー的な楽しみもあってよかった。

ラノベ要素が個人的な好みと合わなかったので、
好み度★は下がってしまったけど、作者の熱量を感じられる一冊だった。
共感できる人とあれこれ語り合いたくなる。


コメント
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