金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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231:佐藤雫『言の葉は、残りて』

2020-11-08 20:37:53 | 20 本の感想
佐藤雫 『言の葉は、残りて
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

海沿いの地にある鎌倉幕府。
美しい景色とうらはらに、そこには陰謀、嫉妬、憎しみが渦巻いていた。
そんな中、若き三代将軍・源実朝のもとに、
摂関家の姫・信子が嫁いでくる。
突然の縁談と異国の地に不安を覚える信子だったが、
実朝の優しさと生まれて初めての海の匂いに包まれ、
次第に心をゆるしていく。
一方の実朝も、信子が教えてくれた和歌の魅力に触れ、
武の力ではなく言の葉の力で世を治めたいと願うようになる。
しかし、殺戮さえいとわない醜い権力争いが、
ふたりを否応なく悲しみの渦に巻き込んでいく―。
第32回小説すばる新人賞受賞作。

*************************

うわァァー!! 少女小説テイストが恥ずかしいよォォー!!

とゴロゴロ転げまわりたくなったが、
ほぼ史実通りに展開して意外性がないのに
最後まで退屈せずに一気読みしてしまった。
この作者さん、筆力が高いね。

視点人物の切り替えが頻繁で、
それぞれのドラマを描こうとしているから、
印象が散漫になってしまっているのは惜しいところ。
タイトルにも関連した「言葉」が、
和歌にとどまらず、御成敗式目につながっていくのは
いちばん、いいなあと思った点なのだけど、これもぼやけてしまった。
でも、いろんな人物にスポットをあてたくなる気持ちはわかる。
この時代の鎌倉、おもしろいもん。

阿波局は永井路子の『炎環』を思わせる。
もう後戻りできないところへ来てしまった、という
北条の兄弟姉妹四人の闇落ちっぷり、
泰時の切なさが印象的。

気になったところが一点。
坊門家は関白の子孫ではあるけれど、
「摂関家」ではないのでは?

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映画:『薬の神じゃない!』

2020-11-08 20:04:54 | 20 本の感想
2020年の映画⑮:『薬の神じゃない!』(ウェン・ムーイエ 監督)
★★★★★

【シネマトゥデイの内容紹介】

上海にある男性用の回春薬を販売する店の店主
チョン・ヨン(シュー・ジェン)は、
店の賃料が払えず妻にもあきれられていた。
何の喜びもない人生を送っていた彼のもとに、
ある日、慢性骨髄性白血病患者のリュ・ショウイーがやって来る。
彼は国内で認可された高額な薬の代わりに、
インドのジェネリック薬を仕入れてほしいとチョンに頼む。
チョンは断るが、大金に目がくらみ、密輸と販売を行うようになる。

*****************************

おそらく今年の個人的ベスト。
実際にあったジェネリック薬に関わる事件をもとにしているそうだけど、
この映画が中国で作られたってことがすごいね。
政府批判と受け取られて公開禁止になりそうだもの。

ストーリーは、ベッタベタのベタ!
チームものにつきものの衝突と絆に、わくわく感、
親子愛、ユーモア。
何より主人公のキャラ立てがいいね。
粗暴ではあるものの、もともと金儲けも父の手術代のためだし、
子どもに弱くて、幼い子が出てくるといい人になっちゃう。
チームメンバーの死を経て、患者たちのために
採算度外視で密輸を再開。
いちばん反発していたチームの若い男の子が、
主人公をかばって罪をかぶとうとしたのに涙。
もちろん、主人公がいなくなれば、
薬が手に入らなくなるという事情もあるが、
息子を手放さなくてはならなくなった父親と、
親元を離れざるを得なかった息子……という背景が
きちんと描かれているから、
損得だけの関係でないことがわかるようになっているのも見事。
敵役として出てきた義弟もいいやつなんだ。

ベタながら、患者たちの見送りで泣いてしまったわ。
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