金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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234:村井康彦 『藤原定家 『明月記』の世界』

2020-11-14 16:23:00 | 20 本の感想
村井康彦 『藤原定家 『明月記』の世界』(岩波新書)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

『新古今和歌集』や『小倉百人一首』の撰者として知られる稀代の歌人は、
どんな日常を送っていたのか。
生涯にわたって綴られた日記を縦横に読み解くことで、
宮仕えの心労と愉しみ、後鳥羽院との関係、家と家族への思いなど、
等身大の定家を浮かびあがらせ、
「武士の時代」の到来によって変貌をとげる宮延社会を活写する。

*************************

先月に出たばかりの本。
テイストとしては、これまでに読んだ『明月記』関連の本と
大きな違いはないのだけども、
為家の妻(宇都宮頼綱の娘)が北条時政・牧の方の孫娘にあたり、
牧の方が家を訪ねてきていたとか、為家の知行国の話とか、
知らないこともいっぱいあった。

テーマを定めてそれに関する記述をピックアップしているので
どうしても話が前後して、時系列や
それぞれの登場人物が何歳のときの話なのかがわからなくなるので、
平安末期から鎌倉初期の出来事の流れを知っている人向けかもしれない。

塚本邦雄の『火宅玲瓏』と田中阿里子の『秋艶』だと、
後妻と定家の関係がギスギスしているんだけど、
この本では仲のいい夫婦と解釈していたのが印象的。

定家の光家(前妻の産んだ長男)に対する態度はひどいんだけど、
今回出てこなかった光家の同母妹に対するもの言いもかなりひどいよね。

冷泉家時雨亭文庫がYouTubeでこの本の出版記念講演を配信しているんだけど、
「冷泉家」と「YouTube」の組み合わせが面白い。
https://www.youtube.com/channel/UCTFIgFZaJ190NM27X6wWWRw

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232:大橋崇行 『遥かに届くきみの聲』

2020-11-14 15:46:47 | 20 本の感想
大橋崇行 『遥かに届くきみの聲』(双葉文庫)
★★★☆☆

【Amazonの内容紹介】

かつて天才子役と呼ばれた小宮透は、
子役だった過去を隠して高校生活を送ろうとしていた。
しかし、偶然にも同級生となったのは、
中学の時に観た朗読コンクールで異彩を放っていた
沢本遥という少女だった。
彼女は子役時代の透が朗読に励んでいたことを知っており、
自分が所属する“朗読部”へ入るようしつこく勧誘してくる。
だが、透はそれを頑なに拒む。
なぜなら、今の透には決して人前で声を出せない理由があった―。
かつてない感動があなたを待ち受ける、新時代の青春小説!

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先輩に借りたもの。
「朗読にもコンクールがあるんだ!」とか
「こうやって審査するんだ!」とか、
知らなかった世界に触れる楽しさはあったし、
扱われている作品を読んでみたいという気にもさせられる。
そういう点ではワクワク感があったのだけども、
「せつない感動」はまったくわきおこらなかった……すまん……。
いなくてもいい「名有り」の登場人物がやけに多かったのは
続編の予定があるからなのかしら。


※以下、ネタバレ含む



主人公の声が出なくなった原因だけども、
どうしてバッシングやいじめにつながるのかが謎。
天狗になっていたとか、もともと反感買うところが多かったのなら
わからないでもないのだけども、あまりにも唐突。
ヒロインの重すぎる過去に必然性が感じられなかったのも
感情移入を妨げた。
そして、主人公のモテっぷり。魅力がわからん……。
しかしそれらの難と感じた部分も、結局は、
「好きな登場人物がいない」という好みの問題から
来ていたのかも。

ただ、「朗読」という題材のおもしろさは確かなので、
本が好きな人は楽しめるのではないかな。

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