金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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12:三島由紀夫 『春の雪―豊饒の海・第一巻』

2017-01-18 17:15:31 | 17 本の感想
三島由紀夫『春の雪―豊饒の海・第一巻』(新潮文庫)
★★★☆☆3.5

【Amazonの内容紹介】

維新の功臣を祖父にもつ侯爵家の若き嫡子松枝清顕と、
伯爵家の美貌の令嬢綾倉聡子のついに結ばれることのない恋。
矜り高い青年が、〈禁じられた恋〉に生命を賭して求めたものは
何であったか?
――大正初期の貴族社会を舞台に、破滅へと運命づけられた
悲劇的な愛を優雅絢爛たる筆に描く。
現世の営為を越えた混沌に誘われて展開する
夢と転生の壮麗な物語『豊饒の海』第一巻。

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もう何年も前から、読もう読もうと思いつつ読まないままだった本。
妻夫木聡と竹内結子で映画にもなっていたなあ。

重厚な文体で描かれる大正期の華族社会と悲恋。
恋の始まりの息詰まるような官能は見事で、
読んでいて胸が苦しくなるくらいだったのだけども、
どうも主人公が身勝手すぎる上に気持ち悪く、
転生を見届けたいという気持ちがまるで湧いてこない。
いや、現代と感覚が違うのは百も承知だし、
身勝手になるのが恋だと言われればそうなのだけれども、
のっぴきならない立場に聡子を追い込んだ、そもそもの発端は、
「童貞をこじらせた清顕の嘘」なので、何となく間抜けなんだよな~。
嘘をついたのはお互い様だが、清顕の行動は「今頃何言ってんの?」としか思えず、
悲劇的な彼の最後にも「自分に酔ってるんじゃないよ……」以外の感想が出てこない。

終盤で明らかになる綾蔵伯爵の「復讐」は、
公家華族の困窮が知識としてあるだけに面白く感じられたんだけど。



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