だいぶ前にもちょっと触れましたが、山村修著『禁煙の愉しみ 煙草をやめることは「苦行」ではない』はちょっと変わった禁煙本です。著書が禁煙をした理由は「身体に悪いから」でも、「社会的圧力のせい」でもなく、単に27年間一日も休まず喫ってきた煙草を止めたらどうなるかに「興味があったから」だそうです(立派です)。かといって、すぱっと禁煙できたわけではなく、「稽古」を重ねて禁煙に踏み切り、一年経っても煙草への未練は消えていない禁煙者です(ヘタレです)。
この著者のユニークな点は、「禁煙は煙草を止めるというマイナスではなく、生活に何かをプラスしていくことである」と言っていることです。ということで、著者は、パスタマシーンを購入してパスタ作りを始めたり、奥さんが作ったひょうたんの実の中身を溶かしてひょうたん作りをしたり、聖書を読み始めたりといろいろなことを始めています。また、「体に悪いから禁煙しよう」とか、(友人を誘って一緒に禁煙したり、煙草を吸ったら罰金を払うなどの)気恥ずかしい方法で禁煙出来る人は、いつでも簡単に禁煙出来る人であると言い切っていることについては、我が意を得たりと勇気づけられ、ずいぶんと気が楽になったものです。
私自身はそんな気楽な気持ちで、肩肘張らずに禁煙に成功した訳ですが、自分はこの著者のように、「禁煙とは生活に新たなものをプラスすること」と言えるような立派な人間ではないと思っていました。しかし、立派ではありませんが、気がつけばいろんなことが生活にプラスされ始めています。
その最たるものは、ジョギングです。きっかけは、1月の駅伝大会に向けて倅のやる気を引き出すためだったわけですが、試走で思いのほか好タイムが出たことで、駅伝が終わったあとも継続して、今に至っています。以前も走ってみようかと思ったことはありますが、息が上がって長続きしませんでした。これはまさに禁煙効果。その流れで最近は、通勤時に降車駅の一駅前(時間がある時は二駅前)で降りて歩いています。通勤前の犬の散歩は禁煙前からですが、最近は「歩け、歩け、走れ、走れ」です。こう書くと、なんか体力系ばかりのようですが、実際その通りです。しかし、大切なのは、何をするかではなく、それが自分にとって大事かどうかでしょう。
最近は会社の健康診断で産業医に「週に一度はお酒を抜きましょう」と言われ、チャレンジ感覚で楽しんで取り組んでいます。禁煙前だったら、「酒もタバコもいくところまで行ってやる」と却って意固地になっているところです。しかし、今は「健康のために何とかしなければ」という悲愴な気持ちではなく、本当に楽しんで出来るようになっています。これも禁煙という一つの壁を乗り越えたからこそです。