天才的な歌声を見出されプロの歌手を目指していたが3年前に19歳で行方不明となっていた並木佐織の遺体が、23年前に行方不明となり4年後に遺体が発見された12歳の少女本橋優奈の殺人容疑で起訴されたが黙秘を貫いて無罪判決を受けた元被告人蓮沼寛一の母芳恵が居住していた静岡県内の家で芳恵の遺体とともに発見され、本橋優奈の事件の捜査を担当して苦杯をなめた刑事草薙が、今回は警視庁捜査1課の係長として並木佐織の事件を担当することとなるが捜査は行き詰まり、草薙の学生時代の友人である物理学者湯川(ガリレオ)に協力を求め…というミステリー小説。
タイトルは、舞台となる東京都「菊野市」の名物イベント「キクノ・ストーリー・パレード」と蓮沼の黙秘権行使(あるいは死者は語れない)から。
裏の裏の裏のような考え込まれた/考え抜かれたプロットで、ミステリーとしては楽しめますが、黙秘権行使によって犯罪者が無罪となって野放しになり刑事補償を1000万円以上受け取って儲けているというようなことが強調されて論われているのには閉口しました。警察が正義のミステリー(少なくとも最後には必ず真実が明らかにされ正義が実現する)ではありがちな姿勢ですが、現実の世界では圧倒的な権力の前に刑事被疑者・被告人の力はあまりにも弱く、権力行使には濫用の危険と誘惑がつきまとい、人間が行うことである以上捜査もまた裁判も過ちを犯すことが避けられないということから、公正のためにあるいは人類の知恵として歴史的に確立されてきた被疑者・被告人の権利である黙秘権や刑事補償の権利が、非難され貶められ蔑ろにされることは、大変残念です。
東野圭吾 文春文庫 2021年9月10日発行(単行本は2018年10月)
タイトルは、舞台となる東京都「菊野市」の名物イベント「キクノ・ストーリー・パレード」と蓮沼の黙秘権行使(あるいは死者は語れない)から。
裏の裏の裏のような考え込まれた/考え抜かれたプロットで、ミステリーとしては楽しめますが、黙秘権行使によって犯罪者が無罪となって野放しになり刑事補償を1000万円以上受け取って儲けているというようなことが強調されて論われているのには閉口しました。警察が正義のミステリー(少なくとも最後には必ず真実が明らかにされ正義が実現する)ではありがちな姿勢ですが、現実の世界では圧倒的な権力の前に刑事被疑者・被告人の力はあまりにも弱く、権力行使には濫用の危険と誘惑がつきまとい、人間が行うことである以上捜査もまた裁判も過ちを犯すことが避けられないということから、公正のためにあるいは人類の知恵として歴史的に確立されてきた被疑者・被告人の権利である黙秘権や刑事補償の権利が、非難され貶められ蔑ろにされることは、大変残念です。
東野圭吾 文春文庫 2021年9月10日発行(単行本は2018年10月)