重力が大きいために光さえ脱出できない天体としてその存在が予測・議論され、最近その観測に成功したと報じられた「ブラックホール」を題材にした宇宙論。
率直にいうと、私の頭ではついて行けませんでした。たとえばブラックホールに自由落下していく探査船の落下速度がブラックホール表面(シュワルツシルド面:事象の地平面 Event Horizon )で光速に達したとするとその内部では光速を超えるなどと論じ、相対性理論の前提となる光速を超えるものは存在しないという原則を、相対性理論は「空間の中を光速度以上で運動することはできない」といっているだけで空間そのものが光速度以上で動くことは禁止していないから矛盾していない(30~33ページ)とか、巨大な質量故に大きな重力が生じているはずなのにブラックホール内ではものは無限に落下し続ける/収縮するからブラックホールの中身は「空っぽ」である(37ページ)と言った挙げ句、ではブラックホールを作った物質やその後にブラックホールに落ち込んだ物質はいったいどこに行くのかは「いまだに答えが見つかっていない現代物理学の『宿題』です」(同ページ)とか言われたら頭がおかしくなりそうです。後者については、「ブラックホールの中に特異点があるという話をしてきましたが、特異点はそもそも時空ではないので、そのふるまいを支配する物理法則がありません。少なくとも現在、そのような物理法則があるのかないのかもわかっていません」(69ページ)とまで書かれているのです。特定の主張を正しいと言うために前提も外し、論証も放棄して、ただこうなるはずだと言っているようにさえ聞こえますし、科学的な論証ではなく禅問答にようにも聞こえます。
ミクロの世界の論理として登場した量子力学を宇宙論につなげることに腐心していることも私の理解を妨げているものと思えます。量子もつれの問題(200~201ページ。対生成された光子は理論上必ず逆方向のスピンを持つが、スピンの方向を含めた量子(光子)の要素は観察するまで確定しない(不確定の確率の束である)から両者が反対方向に進行している場合、一方のスピンを観測したときに他方のスピンが確定することになるところ、そのスピンの情報は光速を超えて伝達することになる)も、量子力学でそのように約束しているからそれは必ず成り立たねばならないという話で、私には昔から学者さんたちの自己満足の話のように思えてなりません。高校生のときに、講談社ブルーバックスで、ブラックホール、相対性理論の本を読み、そこまではそれなりに理解できたので量子力学に手を出したら途端にわからなくなりギブアップした(文転しました)私には、量子力学に対するコンプレックスと偏見があるということなのでしょうけれども。
二間瀬敏史 中公新書 2022年2月25日発行
率直にいうと、私の頭ではついて行けませんでした。たとえばブラックホールに自由落下していく探査船の落下速度がブラックホール表面(シュワルツシルド面:事象の地平面 Event Horizon )で光速に達したとするとその内部では光速を超えるなどと論じ、相対性理論の前提となる光速を超えるものは存在しないという原則を、相対性理論は「空間の中を光速度以上で運動することはできない」といっているだけで空間そのものが光速度以上で動くことは禁止していないから矛盾していない(30~33ページ)とか、巨大な質量故に大きな重力が生じているはずなのにブラックホール内ではものは無限に落下し続ける/収縮するからブラックホールの中身は「空っぽ」である(37ページ)と言った挙げ句、ではブラックホールを作った物質やその後にブラックホールに落ち込んだ物質はいったいどこに行くのかは「いまだに答えが見つかっていない現代物理学の『宿題』です」(同ページ)とか言われたら頭がおかしくなりそうです。後者については、「ブラックホールの中に特異点があるという話をしてきましたが、特異点はそもそも時空ではないので、そのふるまいを支配する物理法則がありません。少なくとも現在、そのような物理法則があるのかないのかもわかっていません」(69ページ)とまで書かれているのです。特定の主張を正しいと言うために前提も外し、論証も放棄して、ただこうなるはずだと言っているようにさえ聞こえますし、科学的な論証ではなく禅問答にようにも聞こえます。
ミクロの世界の論理として登場した量子力学を宇宙論につなげることに腐心していることも私の理解を妨げているものと思えます。量子もつれの問題(200~201ページ。対生成された光子は理論上必ず逆方向のスピンを持つが、スピンの方向を含めた量子(光子)の要素は観察するまで確定しない(不確定の確率の束である)から両者が反対方向に進行している場合、一方のスピンを観測したときに他方のスピンが確定することになるところ、そのスピンの情報は光速を超えて伝達することになる)も、量子力学でそのように約束しているからそれは必ず成り立たねばならないという話で、私には昔から学者さんたちの自己満足の話のように思えてなりません。高校生のときに、講談社ブルーバックスで、ブラックホール、相対性理論の本を読み、そこまではそれなりに理解できたので量子力学に手を出したら途端にわからなくなりギブアップした(文転しました)私には、量子力学に対するコンプレックスと偏見があるということなのでしょうけれども。
二間瀬敏史 中公新書 2022年2月25日発行