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伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

検証 政治改革 なぜ劣化を招いたのか

2022-08-15 21:36:34 | 人文・社会科学系
 政党本位、政策本位の選挙で政権を選択し政権交代の可能性のある政治体制と政治主導の政策決定の体制を確立するという目標でなされた一連の政治改革が、官邸主導の一強体制を生み、一般国民の意見や希望が国の政治に十分反映されていると答えた人が1.9%(はじめにⅲページ)という国民の期待からかけ離れたものとなってしまった原因を検討し、対策を提言する本。
 絶対得票率で25%程度しかない自民党が60%前後の議席を取る選挙制度の下で選挙に勝ったということで信任を得たとして反対意見の強い政策を断行する権力行使への自制心のなさ(169~174ページ)、質問に対して答をはぐらかしまともに答えない言葉を軽んじ誠実な説明をしようとしない姿勢(181~182ページ等)など、簡単にいえば政治改革以前の自民党には残っていた度量やフェアネスが、そういったことに何ら関心を払わない安倍・菅政権で徹底的に排除された、言い換えれば安倍晋三や菅義偉のような恥知らずの者が最高権力者として君臨することを想定できなかったことが政治改革敗北の原因ということでしょうか。
 といって、そのうまみを知った自公政権が人が替わったから改心するとも思えず、解決は制度改革に求めざるを得ないのですが、著者の提案する小選挙区比例代表併用制/連用制等の実現もよほどのことがなければ実現は難しいでしょう。
 一強体制をチェックする機構の弱体化に関して、メディアの体たらくについてわずかに10ページ(154~163ページ)しか取らず、対策提言ではメディア関係は皆無というのは、共同通信社編集局特別編集委員兼論説委員の著者が書くものとしていかがなものかと思います。


川上高志 岩波新書 2022年2月18日発行
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