作家として2冊の本を出したが早逝した父を「穀潰し」と蔑み自分と母に迷惑ばかりかけたと恨みながら、父が若き日に読んだ名作小説を読み続けるという拗くれた高校2年生の図書委員越前亨が、ペアで図書当番の1年生小崎優子が連日屋上でクラゲ乞いをするのを呆れながら見続けていたが、小崎がそうとは知らずに越前の父の作品の購入申請をしたことに驚きながらそれを密かに妨害し、3年生の図書委員矢延も絡んできて…という青春小説。
越前の父は「我儘を言って仕事を辞めて本を書き、持ち込みでどうにか出版にこぎつけ、ろくに稼ぎもしないまま病気で死んだ」(43ページ)、「『てんとう虫の願い』は、七尾虹の売れなかったデビュー作だ」(54ページ)、「売れなかった駄作」(40ページ)、「鳴かず飛ばずの作家だった」(274ページ)というのに、その2作品がどちらも文庫本(252ページ)って、どうなんでしょう。
この作者、登場人物を描写するとき、ヘアスタイルが重視されているようで、小崎は「薄い茶色の長髪」(10ページ)、「長い茶髪」(13ページ)、「長い髪」(17ページ、57ページ)、「茶色の長い髪」(68ページ)、「茶色の長髪」(114ページ)、「長い茶色の髪」(186ページ)、「動物の尻尾みたいな茶色の房」(215ページ)、「色素の薄い長髪」(275ページ)等、かなり繰り返して髪が長いことが示されています。これに対し矢延先輩は「あごのあたりで髪を切りそろえた」(35ページ)、「黒髪ぱっつんの先輩」(51ページ)、前の席に座るクラスメイト関岡は「セミロングの黒髪」(33ページ、109ページ)、「ぼさぼさのセミロング」(189ページ)、「セミロングからロングになっている」(232ページ)という具合です。主要人物以外でも髪のことが書かれている割合が高い。それで、表紙イラストの女性、ショートカット(ボブ)なんです。まさか矢延先輩ですか? 屋上に立ち尽くし、周囲にクラゲが舞っていることからしても小崎優子以外には考えられないんですが。読書週間のPOPを作るのに本も読まずに作った越前の姿勢が責められています(90ページ、115~116ページ、358ページ)が、まさかイラストレーター、この本を読まずに描いた?
鯨井あめ 講談社文庫 2022年6月15日発行(単行本は2020年6月)
小説現代長編新人賞受賞作
越前の父は「我儘を言って仕事を辞めて本を書き、持ち込みでどうにか出版にこぎつけ、ろくに稼ぎもしないまま病気で死んだ」(43ページ)、「『てんとう虫の願い』は、七尾虹の売れなかったデビュー作だ」(54ページ)、「売れなかった駄作」(40ページ)、「鳴かず飛ばずの作家だった」(274ページ)というのに、その2作品がどちらも文庫本(252ページ)って、どうなんでしょう。
この作者、登場人物を描写するとき、ヘアスタイルが重視されているようで、小崎は「薄い茶色の長髪」(10ページ)、「長い茶髪」(13ページ)、「長い髪」(17ページ、57ページ)、「茶色の長い髪」(68ページ)、「茶色の長髪」(114ページ)、「長い茶色の髪」(186ページ)、「動物の尻尾みたいな茶色の房」(215ページ)、「色素の薄い長髪」(275ページ)等、かなり繰り返して髪が長いことが示されています。これに対し矢延先輩は「あごのあたりで髪を切りそろえた」(35ページ)、「黒髪ぱっつんの先輩」(51ページ)、前の席に座るクラスメイト関岡は「セミロングの黒髪」(33ページ、109ページ)、「ぼさぼさのセミロング」(189ページ)、「セミロングからロングになっている」(232ページ)という具合です。主要人物以外でも髪のことが書かれている割合が高い。それで、表紙イラストの女性、ショートカット(ボブ)なんです。まさか矢延先輩ですか? 屋上に立ち尽くし、周囲にクラゲが舞っていることからしても小崎優子以外には考えられないんですが。読書週間のPOPを作るのに本も読まずに作った越前の姿勢が責められています(90ページ、115~116ページ、358ページ)が、まさかイラストレーター、この本を読まずに描いた?
鯨井あめ 講談社文庫 2022年6月15日発行(単行本は2020年6月)
小説現代長編新人賞受賞作