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伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ミスしない大百科 “気をつけてもなくならない”ミスをなくす科学的な方法

2022-08-21 22:48:51 | 実用書・ビジネス書
 人がよくやるビジネス上のミスについて原因を検討し、ミスを防ぐ方法について説明する本。
 多くのミスは脳の注意の限界を超える、脳の注意がそれることによるので、基本的には、脳が注意を使っているもの・事柄をメモに書き出す等してとりあえず注意から手放す、注意を奪うもの(典型的にはスマホ)から離れる、ルーティーンワークは注意を要しないレベルまで体得する(慣れる)ことにより、脳の注意のムダ遣いをなくし、余裕を取り戻すことが肝要と主張しています(32~36ページ)。1つめは、いろいろやるべきことがあるという気持ちでいると余裕がなくなり、あれもしないとと思っていると集中ができないことがあるので、それを整理してみると、現実的にはそれほど切羽詰まっていないことがわかったり、優先順位付けをはっきりさせると落ちついて対応しやすくなり気持ちに余裕ができるので、そのとおりと思います。2つめもたぶんそのとおりですが、メールをどこまで気にせずにいられるかは仕事の性質にもよるでしょうね。他方、3つめは理屈はそうですけど、それをいってもすぐにできるわけじゃないから解決策としてはあまり有効とは思えません。
 日程を確認するときに、日付とともに曜日を伝える(65ページ)は、そのとおりだと思います。私も、相談申込を受けたときに、相談日時は、たとえば電話では「15日月曜の午後2時」というとき、さらに繰り返して「来週の月曜日、15日の14時、午後2時」といった具合に、複数の言い方で確認するようにしています。その曜日での確認について、人はカレンダーのどのへんに書いているという視覚情報で思い込むことがあるので、日曜始まりのカレンダーと月曜始まりのカレンダーを併用しないよう注意している(65~66ページ)のですが、ポイントを抽出した扉で「土曜始まりと日曜始まりのカレンダーを一緒に使わない」と記載されています(64ページ)。土曜始まりのカレンダーって、ないことはないでしょうけど、本文では日曜始まりと月曜始まりって言ってるんだから、これはやはり扉部分の作成者とのコミュニケーションミスなんではないか、そういうミスはやっぱりミスを防ぐ本を書く手練れでも「科学的」に防げないのか、とムダに悩んでしまいました。


飯野謙次、宇都出雅巳 SBクリエイティブ 2021年3月6日発行
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情報刑法Ⅰ サイバーセキュリティ関連犯罪

2022-08-20 22:13:04 | 実用書・ビジネス書
 サイバーセキュリティ(コンピュータ・ネット環境・インフラの安全確保)に対する侵害としての不正アクセス罪、通信の秘密侵害罪、マルウェア(コンピュータウィルス)作成・提供・供用・取得・保管罪、電磁的記録不正作出等罪・電磁的記録毀棄罪、電子計算機損壊等業務妨害罪、情報等を保護するために設けられているものとしての電子計算機使用詐欺罪、営業秘密侵害罪、個人情報データベース等の提供に関する罪等について、その成立要件等を解説した本。
 日本の法律の特徴と言えますが、犯罪(罪となる行為)の定義が抽象的で非常に幅広い行為が処罰対象となりうるし結果(被害)が具体的に発生することもさらには結果発生の具体的な危険さえ生じなくても処罰しうる(いわゆる抽象的危険犯)刑罰法規が制定され、そのこと自体はこの本の執筆者も共通に理解しているように見えますが、サイバー犯罪が手を変え品を変え生まれてくるのをもれなく処罰するためにはそれが望ましいと考えつつサイバーセキュリティを守る側の行為(防衛策を開発するための試行等や対策パッチ等の一方的な供用等)までが犯罪となり得ることを憂慮しそういった「正義の側」(実質的に「お上」の側)が萎縮することになってはならないという限度で犯罪の範囲を限定解釈すべきと考える者、(デュアルユース=公益的にも侵害的にも使用できるものを含めた)ソフトウェア開発者一般の自由を確保し萎縮させない考慮が必要と考える者、ソフトウェア開発者以外も含めて企業の経済活動(金儲け)の便宜を優先的に考える者、市民の自由・罪刑法定主義の観点からあまりにも広汎な処罰規定には疑問があり一定程度は制約すべきと考える者といった具合に、執筆者のスタンスに微妙な違いが感じられ、私はそのあたりに関心を持って読みました。Winny事件で開発者を無罪とした高裁判決を維持した最高裁決定、コインハイブ事件でサイト運営者を無罪とした最高裁判決、他方でスマホの位置情報アプリを開発した企業の経営者を有罪とした判決等についての評価はなかなか興味深いところです。基本的にはお上と企業活動に奉仕する人びとで大きな違いはないように思われますけれど。
 近年、企業活動の保護・便宜に非常に偏した立法が進み、不正競争防止法の営業秘密侵害罪は信じがたいほどの重罰化が進んでいますが、この本では、当然のこととしてそれに対する批判的な視点はなく、その解説部分(第10章)では、法律の解説のみならず、企業が営業秘密を守るための侵害予防措置についての助言までしています(295~300ページ)。これって法律の解説書じゃなくて、企業側の弁護士の企業指南書なんですか。
 法学者も入って、罪刑法定主義についても触れながら、全体として市民の自由を守ろうという気概には乏しいように思えます。そもそもあまりにも多数の刑罰法規が続々と作られて多くは誰もその存在を知らない上に、刑罰規定の条文を読んでも、この本でも度々難しいという言葉が出てくるように、専門家でさえどこまでが犯罪となるのかはっきりわからないような処罰規定を作ること自体、罪刑法定主義(本来的には、何が犯罪となるかを予め明確に知らしめておく)を満たしていないんじゃないかという気がします。企業の経済活動(利益、金儲け)を守るためにはその障害となるような行為はすべからく処罰できるようにすべきだという価値観で動く法律家が蔓延していることを改めて憂慮しました。
 ま、学生時代に刑法好きだった私としては、久しぶりに刑法学的な本を通読して、理論展開に関しては懐かしいなぁという思いもしましたけどね。


鎮目征樹、西貝吉晃、北條孝佳編 弘文堂 2022年6月15日発行
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あのこは美人

2022-08-19 23:12:11 | 小説
 ソウルのオフィステル(多目的ビル中の賃貸マンション部分)に住む、ある事情で言葉を失った、アイドルオタクの美容師アラ、アラの中学の同級生で孤児院「ローリング・センター」出身で、高級ルームサロン嬢として稼ぎたくて美容整形を強く希望する、アラとルームシェアしているスジン、高級ルームサロン「エイジャックス」のNo.1で大企業の御曹司の客ブルースと肉体関係を持つキュリ、孤児院出身だが幸運にも奨学金を得てニューヨークに留学しその際に知り合った大金持ちの息子ハンビンと交際しているアーティストで、キュリとルームシェアしているミホ、その4人の下の階に夫と住むウォナの、気概と自負と苦悶と諦めを描いた小説。
 邦題の「あのこは美人」も、原題の " If I Had Your Face " もそこにストレートにこだわっているのは、登場人物5名中唯一語り手にならないスジンだけなので、そのスジンのこだわり、願望が最初に出てくるとはいえ、ちょっと肩透かしというか、そぐわない感があります。容貌にフォーカスするのではなく、もう少し拡げて隣の芝生は青い的な思い、あるいは努力しても報われないことへの焦燥感、その社会への不満を象徴していると考えれば、よりフィットするかなとは思いますが。
 冒頭にアラが言葉を失った事情がぼかされて、何となくその謎を気にしながら読むことになりますが、それもそこに期待して読むと、それを明かす部分はわりとあっさりしていますので、何だと思うかもしれません。
 韓国社会で、日本社会でも同様と思いますが、恵まれた階層に生まれなかった若い女性の生きづらさ、苦しみ、そういったものへの反発・反感などを読む作品だろうと思います。


原題: If I Had Your Face
フランシス・チャ 訳:北田絵里子
早川書房 2022年2月25日発行(原書は2020年)
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毎日楽しい! 色の日めくり配色帖365

2022-08-18 21:59:58 | 趣味の本・暇つぶし本
 1日1ページで1つの色を関連するイメージ写真、エッセイふうの説明文、その色の色見本とそれと2色をセットにした3色のコーディネート例を紹介した本。
 写真とコーディネート例が目に楽しく眺められますが、同時に、色名の元となったものの写真の色と色見本のズレ、その色名から自分がイメージする色と色見本のズレに首をひねることになる場面が多くありました。
 色が、ピンク、レッド、オレンジ、ブラウン、イエロー、グリーン、ブルー、バイオレット&パープル、ニュートラルにグルーピングされているのですが、その分類も?と思えるところが少なくありません。たとえばDay086 Peach がオレンジに入っているとか…
 まったく同じ色(見本)が別名で2回紹介されているところがあるのは、意図的なものでしょうか、ミスなんでしょうか。Day226 Sky Blue と Day266 空色(ともにCyan 40, Magenta 0, Yellow 5, Key plate 0)、Day248 Forget-me-not とDay282 勿忘草色(ともにC48, M10, Y0, K0)、Day348 Silver Grayと Day356 銀鼠(ともにC0, M0, Y0, K43)は、あえて国際的な慣用色名と日本の伝統色名が併存するということで掲載したのかもしれません。それでもDay364 消炭色では英語の「チャコールグレイ」に相当する色と紹介しながら異なる色見本(Day349 Charcoal Gray はC5, M15, Y0, K83、Day364 消炭色はC0, M0, Y0, K85)を掲載しています。そして、Day024 Baby PinkとDay032 一斤染(ともにC0, M20, Y10, K0)、Day329 Oyster WhiteとDay330 Ivory(ともにC0, M1, Y12, K5)はそういう関係にはないはずですが、まったく同じ色見本が掲載されています。(こういうの気にして見つけちゃうの、職業病ですね。ただし、仕事じゃないので一覧表までは作りませんでしたから完璧ではないでしょうけど:どなたか、さらに他に見つけられるか、チャレンジします?)
 他方で、人間の目がけっこう微細な色の違いを見分けられることも気付かせてくれます。Day327 Milky White(C0, M0, Y3, K0)とDay328 Pearl White(C0, M0, Y5, K0)、Day341 胡粉色(藤田嗣治が女性の肌に使っていた色と説明されています:C0, M0, Y2, K0)が、並べてみると確かに違って見えるのは、けっこう感動ものでした。


桜井輝子 SBクリエイティブ 2022年5月2日発行
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晴れ、時々くらげを呼ぶ

2022-08-17 22:37:29 | 小説
 作家として2冊の本を出したが早逝した父を「穀潰し」と蔑み自分と母に迷惑ばかりかけたと恨みながら、父が若き日に読んだ名作小説を読み続けるという拗くれた高校2年生の図書委員越前亨が、ペアで図書当番の1年生小崎優子が連日屋上でクラゲ乞いをするのを呆れながら見続けていたが、小崎がそうとは知らずに越前の父の作品の購入申請をしたことに驚きながらそれを密かに妨害し、3年生の図書委員矢延も絡んできて…という青春小説。
 越前の父は「我儘を言って仕事を辞めて本を書き、持ち込みでどうにか出版にこぎつけ、ろくに稼ぎもしないまま病気で死んだ」(43ページ)、「『てんとう虫の願い』は、七尾虹の売れなかったデビュー作だ」(54ページ)、「売れなかった駄作」(40ページ)、「鳴かず飛ばずの作家だった」(274ページ)というのに、その2作品がどちらも文庫本(252ページ)って、どうなんでしょう。
 この作者、登場人物を描写するとき、ヘアスタイルが重視されているようで、小崎は「薄い茶色の長髪」(10ページ)、「長い茶髪」(13ページ)、「長い髪」(17ページ、57ページ)、「茶色の長い髪」(68ページ)、「茶色の長髪」(114ページ)、「長い茶色の髪」(186ページ)、「動物の尻尾みたいな茶色の房」(215ページ)、「色素の薄い長髪」(275ページ)等、かなり繰り返して髪が長いことが示されています。これに対し矢延先輩は「あごのあたりで髪を切りそろえた」(35ページ)、「黒髪ぱっつんの先輩」(51ページ)、前の席に座るクラスメイト関岡は「セミロングの黒髪」(33ページ、109ページ)、「ぼさぼさのセミロング」(189ページ)、「セミロングからロングになっている」(232ページ)という具合です。主要人物以外でも髪のことが書かれている割合が高い。それで、表紙イラストの女性、ショートカット(ボブ)なんです。まさか矢延先輩ですか? 屋上に立ち尽くし、周囲にクラゲが舞っていることからしても小崎優子以外には考えられないんですが。読書週間のPOPを作るのに本も読まずに作った越前の姿勢が責められています(90ページ、115~116ページ、358ページ)が、まさかイラストレーター、この本を読まずに描いた?


鯨井あめ 講談社文庫 2022年6月15日発行(単行本は2020年6月)
小説現代長編新人賞受賞作
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新しい皮膚の教科書 医学的に正しいケアと不調改善

2022-08-16 23:42:25 | 実用書・ビジネス書
 皮膚の健康保持について解説した本。
 「はじめに」で「本書は、皮膚の機能・皮膚病・美容法に関する『正しい情報』をわかりやすく選別してお伝えすることを基本理念としました。科学的に明らかにされていないことを、無理に理論的に伝えることはしません」と書かれています(10ページ)。皮膚科医が書くのですから当然のことなのかもしれませんが、タイトル・サブタイトルとも合わせて、ずいぶんと自信たっぷりに見えます。
 スキンケアに関して、食事や睡眠、運動などよりも、化粧品と治療(シミ取りレーザー治療、レーザー脱毛、美容注射・点滴)が先に書かれているというのは、類書にあまり見られない斬新な構成に思えます。その中で肌の潤いを保つためにセラミド補給が必要として著者がプロデュースした化粧品を勧め(75ページ)、シミ取りや脱毛、美容注射の料金表を付けてお勧めしているのは、「正しい情報」を伝えるということよりもセールスを重視しているように見えてしまいます。料金表は、掲載している方が良心的といえるのかも知れませんが。


豊田雅彦 池田書店 2022年6月25日発行
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検証 政治改革 なぜ劣化を招いたのか

2022-08-15 21:36:34 | 人文・社会科学系
 政党本位、政策本位の選挙で政権を選択し政権交代の可能性のある政治体制と政治主導の政策決定の体制を確立するという目標でなされた一連の政治改革が、官邸主導の一強体制を生み、一般国民の意見や希望が国の政治に十分反映されていると答えた人が1.9%(はじめにⅲページ)という国民の期待からかけ離れたものとなってしまった原因を検討し、対策を提言する本。
 絶対得票率で25%程度しかない自民党が60%前後の議席を取る選挙制度の下で選挙に勝ったということで信任を得たとして反対意見の強い政策を断行する権力行使への自制心のなさ(169~174ページ)、質問に対して答をはぐらかしまともに答えない言葉を軽んじ誠実な説明をしようとしない姿勢(181~182ページ等)など、簡単にいえば政治改革以前の自民党には残っていた度量やフェアネスが、そういったことに何ら関心を払わない安倍・菅政権で徹底的に排除された、言い換えれば安倍晋三や菅義偉のような恥知らずの者が最高権力者として君臨することを想定できなかったことが政治改革敗北の原因ということでしょうか。
 といって、そのうまみを知った自公政権が人が替わったから改心するとも思えず、解決は制度改革に求めざるを得ないのですが、著者の提案する小選挙区比例代表併用制/連用制等の実現もよほどのことがなければ実現は難しいでしょう。
 一強体制をチェックする機構の弱体化に関して、メディアの体たらくについてわずかに10ページ(154~163ページ)しか取らず、対策提言ではメディア関係は皆無というのは、共同通信社編集局特別編集委員兼論説委員の著者が書くものとしていかがなものかと思います。


川上高志 岩波新書 2022年2月18日発行
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潔白の法則 上下

2022-08-14 18:32:10 | 小説
 主人公である敏腕弁護士マイクル・ハラーが、自ら運転していたリンカーンのトランクからかつての依頼者である義捐金詐欺師サム・スケールズの銃殺死体が発見されたため、逮捕されて殺人罪で起訴され、無実/潔白を証明するために奔走するリーガル・サスペンス。「リンカーン弁護士」シリーズの第6作。
 毎度感心するのですが、法廷での駆け引き、予定外の展開となった際の準備していた材料の見切り、プランAからプランBあるいはプランCへの切り換えの判断の描写は、弁護士の目から見てもリアリティがあります。弁護士経験のない作者が、これを、それも6作も書けるということは驚きです。
 他方において、ミステリー小説という点から見ると、謎の部分、布石と見える部分がせいぜい示唆にとどめられて十分解明・解説されていないきらいがあり、フラストレーションを残します。小説世界とは違って現実の事件では、多くのことは結局はわからず、また予定・想定していたことができないままに放置されることは多々あるもので、裁判もの・弁護士ものとしては、特に私のような業界人の目にはむしろそれがリアリティを感じさせるのではありますが。
 シリーズ第5作(罪責の神々:2013年)から第6作まで7年の期間が空いたことについて、訳者あとがきでは、その間に新たに登場したレネイ・バラードシリーズの評判が良かったためにそちらに作者が力を注いでいたことも大きかったせいではないか(下巻371ページ)とされています。そうであれば、今後もシリーズが続くことになりますが、法廷シーン中心のリーガル・サスペンスを6作も続けて書けていること自体が奇跡に近いと言えますし、7年空いた上で主人公が被告人という設定を用いたこと自体ネタ詰まりを予感させます。リーガル・サスペンスファンの1人としては、作者の健闘を切望しているのですが。


原題:The Law of Innocence
マイクル・コナリー 訳:古沢嘉通
講談社文庫 2022年7月15日発行(原書は2020年)

第1作 リンカーン弁護士:2012年7月19日の記事で紹介
第2作 真鍮の評決:2012年7月26日の記事で紹介
第3作 判決破棄:2016年4月27日の記事で紹介
第4作 証言拒否:2016年5月12日の記事で紹介
第5作 罪責の神々:2018年4月21日の記事で紹介

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SNS炎上なんてしないと思っている人が読むべき本

2022-08-13 23:43:55 | 実用書・ビジネス書
 SNS炎上の実情を説明し、炎上の予防、個人を特定されることによる被害拡大の防止、炎上した場合の対策などを解説する本。
 SNSでの発言等は、仲間内のものと思っても実際にはそうならない(誤って「公開」設定で投稿したり、その仲間が拡散する)かもしれない、匿名で投稿しても炎上すれば興味本位や「正義感」から個人を特定するネット民によって晒しや電凸などの攻撃を受けることになりかねないので、すべて公共空間での発言と考えてやりましょうということが基本線となります。
 ただSNSの怖いところは、過去の発言も検索で拾い出され、間違って投稿してすぐに削除してもスクリーンショット等で保存した者がいれば拡散されてしまうというところです。人間、いくら気をつけても限界があるのに、それを許さない過酷さがあります。
 個人の情報の特定に関しては、投稿した写真の瞳に映っていた風景から最寄り駅が特定された(96~97ページ)とか、ピースサインの写真から指紋情報を取得することが可能(98~99ページ)ということになると、写真の投稿にも慎重を期すべきことになります。嫌な世の中になったなぁとは思いますが、そう言ってみても仕方ないので、さらに注意をしましょうということですね。


宮下由多加、仲澤佑一 ジャムハウス 2022年5月18日発行
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成しとげる力

2022-08-12 22:32:54 | 実用書・ビジネス書
 モーターメーカー日本電産の創業者である著者が、自社の経営の方針と現在の持論を述べた本。
 著者がこれまでの会社経営の方針・理念、自分はこれで成功してきたと述べるのは、基本的には精神論です。「一番をめざせ!」「一番以外は全部ビリ」と繰り返し檄を飛ばし、訴え続けてきた(22ページ)、「携わる人たちの意識をいかに高めるかーそれは経営やビジネスだけにとどまらない。人が生きるあらゆる場面において、もっとも大切なことだと信じている」(同ページ)というのです。M&Aで買収した会社の従業員を解雇はしないと繰り返しつつ、その意識改革を図るとしてトイレットペーパーの購入価格を聞く、ゴミ箱をすべて持ってこさせてひっくり返してみてまだ使えるものはないか確認する(193ページ)、会社の最高責任者が呼んでいるのになんで五分もかかるんだと厳しく教育する(63ページ)などが得意げに書かれています。買収された側、雇われている側は仕方ないのでしょうけれども、こういう会社で働きたいかですね。
 京都から大阪に電車で行くとき、各駅停車が先に来て5分後に来る急行があり大阪には急行が先に着くときにどうするか、先に来る各駅停車に乗って途中駅で急行に乗り換える、何が起こるかわからないから目的地に少しでも近づいておくことが大切だ、創業経営者は、たいていこういう発想をするものだと述べています(65~66ページ)。「乗るはずだった急行が時間どおりに来るとはかぎらない」「定刻通りに来ても満員で乗車できないかもしれない」からというのであれば、急行は予定どおりに運行されているのに各駅停車が急行が止まらない駅でトラブルがあって運転中止して急行に追い抜かれたらどうするのか、乗った駅では満員でなかった急行が乗換駅では満員で乗り換えられなかったらどうするのかと思いました。
 日本の大学教育に欠陥がある、「大学側は、顧客である我々企業家が満足するような卒業生を自信を持って送り出してきたか」(230ページ)といい、大学経営を始めたというのですが、単に自社を初めとする企業に都合のいい人材を求めているだけじゃないですか。大学は企業のためにある、企業に奉仕する存在だと言い放っているのです。2021年からは中学高校を運営する法人も合併して中高大一貫教育に取り組むとか(247ページ)。どんな人材が育成されるんでしょうね。


永守重信 サンマーク出版 2021年11月25日発行
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