Sightsong

自縄自縛日記

古田一行+黒沢綾+永武幹子@本八幡cooljojo

2019-02-24 23:23:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2019/2/24)。

Kazuyuki Furuta 古田一行 (ts)
Aya Kurosawa 黒沢綾 (vo)
Mikiko Nagatake 永武幹子 (p)

ファーストセット、最初の2曲「I Thought About You」「It's Alright With Me」はテナーとピアノとのデュオ。最初は古田さんのテナーのキーを操作する音が割と大きく響いたが、やがてそれは音色のグラデーションの一部だと気付いた。

ここで黒沢さんが入り、ジョビンの「Dindi」においては、古田さんは息遣いを増幅させて揺らぐようにヴォイスに重なった。「Up Jumped Spring」(フレディ・ハバード)に続く「Mata Hari」(ジョヴァンニ・ミラバッシ)では、大波が来ては去っていくようなヴォーカル、それが遠ざかるところで絶妙にテナーが入る。永武さんのピアノもまた大波であり見事。最後はびっくり、矢野顕子とパット・メセニーの「Prayer」。黒沢さんの声にアッコちゃんと似たところもある。

セカンドセットも最初の2曲はピアノとテナーのデュオ。「Doxy」(ロリンズ)ではスローテンポ、サビの盛り上がりを敢えて擦れさせるテナーが良い。ピアノソロもさすが。「Yardbird Suite」(パーカー)ではテナーがノッているが、ピアノはさらに飛翔する。愉しい。

また黒沢さんが入った。彼女のオリジナル「月が赤く染まるとき」ではテナーを濁らせた。「Skylark」では透明でちょっと前のめりな歌い方、ピアノが音を散らしているのも含めて春の雰囲気が出ているように聴こえた。テナーがヴォーカルと並走し、その綾もまた春な感覚。「Just Squeeze Me」(エリントン)、テナーがゆっくりと吹きはじめ、ヴォーカルが続いた。永武さんは足踏みをしてメロディを口ずさみながら弾く。「Valentine」(フレッド・ハーシュ)で締めて、さらにアンコール。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●永武幹子
蜂谷真紀+永武幹子@本八幡cooljojo(2019年)
2018年ベスト(JazzTokyo)
佐藤達哉+永武幹子@市川h.s.trash(2018年)
廣木光一+永武幹子@cooljojo(2018年)
植松孝夫+永武幹子@中野Sweet Rain(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
永武幹子+類家心平+池澤龍作@本八幡cooljojo(2018年)
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
酒井俊+永武幹子+柵木雄斗(律動画面)@神保町試聴室(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One(2017年)
MAGATAMA@本八幡cooljojo(2017年)
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)


組原正+橋本孝之+鷲見雅生、内田静男@七針

2019-02-24 10:51:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

新川の七針(2019/2/23)。

Tadashi Kumihara 組原正 (g)
Takayuki Hashimoto 橋本孝之 (as)
Masao Sumi 鷲見雅生 (b)
Shizuo Uchida 内田静男 (b)

ファーストセット、組原・鷲見デュオ。やはり観るたびに独特さでくらくらさせられる組原さんのギター。速いパッセージで翼をばさばさと振りながら舞う怪鳥のようだ。それに対して鷲見さんはベースの音を力技で楔のように突き刺していく。

セカンドセット、内田静男ソロ。緩めの弦を不穏にしならせ、邦楽にも聴こえる響きを出し始める。ここからの1時間弱は圧巻だった。エフェクターとともに、無数の闇の声を集めてはずらし、重ね合わせて提示する。ハコのあちこちがノイズで軋むようにさえ感じられる。これまで内田さんのプレイに感じていた印象を遥かに凌駕する演奏だった。終わった後、橋本さんは「えげつない」「えぐい」と表現した。

サードセット、組原・橋本・鷲見トリオ。殺気を静かにまき散らしながら左右に舞う怪鳥のギター、楔から杭へと打ち込む強度が増したベース、そして一貫して叫び、時空間に裂け目を入れ続ける橋本さんのアルト。トリオとなっていることで、三者異なる力のヴェクトルがパノラマ風景を創出した。これにも驚いた。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●組原正
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)
グンジョーガクレヨン、INCAPACITANTS、.es@スーパーデラックス(2016年)

●内田静男
橋本孝之+内田静男『UH』(-2018年)
むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる(Albedo Gravitas、Kみかる みこ÷川島誠)@大久保ひかりのうま(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年)

●橋本孝之
フローリアン・ヴァルター+直江実樹+橋本孝之+川島誠@東北沢OTOOTO(2018年)
山本精一+橋本孝之@大久保ひかりのうま(2018年)
#167 【日米先鋭音楽家対談】クリス・ピッツィオコス×美川俊治×橋本孝之×川島誠
特集 クリス・ピッツィオコス(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
第三回天下一Buzz音会 -披露”演”- @大久保ひかりのうま(2017年)
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年)
橋本孝之『ASIA』(JazzTokyo)(2016年)
グンジョーガクレヨン、INCAPACITANTS、.es@スーパーデラックス(2016年)
.es『曖昧の海』(2015年)
鳥の会議#4~riunione dell'uccello~@西麻布BULLET'S(2015年)
橋本孝之『Colourful』、.es『Senses Complex』、sara+『Tinctura』(2013-15年)


『Black is the color, None is the number』

2019-02-24 08:41:21 | アート・映画

デュッセルドルフのCubic Studiosにて、『Black is the color, None is the number』(2019/2/17)。

近くに住むサックスのフローリアン・ヴァルターにデュッセルドルフに行くと連絡したところ、ダンスを観に行くから一緒にどうか、と。なんと皆藤千香子さんの振付によるステージ。到着早々だがこれは是が非でも駆けつけなければならない。

到着したら、即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』に出演していた荒川創也、ヤシャ・フィーシュテートのふたりがいて、そしてヴァルターもほどなくして現れた。もちろん皆藤さん。

Taneli Törmä (dance)
Jascha Viehstädt (creation)
Phillip Schulze Bühnenbild (live music)
Ivan Geddert (scenic design)
Kanade Hamawaki 濱脇奏 (light design, graphic)
Chikako Kaido 皆藤千香子 (choreography, concept)

写真スタジオの白い空間に、タネリ・トルマがひとり立っている。横にはマットレスがふたつ。サーチライトのような照明がかれに向けられ、動かされている。

横臥しているダンサー。手の動き、足の動き、それらの機能をひとつひとつ試しているようだ。かれは立ち上がり、ばらばらだった各機能を有機的につなぎあわせ、獲得し、身体の中で軋みを摩耗させていく。しかしその動きは逆に過剰にも振れる。また倒れては、いちからひとつひとつの機能を試す。

ここで横臥するかれの上に光の啓示がある。アンビエントな音楽が止まり、また此岸に戻ってくることで、音楽の存在感が露わになったりもした。かれはマットレスの背後に隠れ、倒したそれをひたすらに動かす。まるでシジフォスが岩を山頂に持ち上げ続ける苦行のように。

これは誕生の物語であり、人生そのものでもあるように思えた。オーディエンスは1時間、このプロセスを取り込み、凝視し続けた。

終わったあとで皆藤さんに聞くと、これはゼロから1へのコンセプトであり、そこには物質の質量に関与するヒッグス粒子も意識したということ。スタニスワフ・レム『ソラリス』においては海の中に創出される顔の部品が相互に噛み合わない違和感が書かれていたが、今回のステージは、そのような段階からの誕生と運命とが表現されたのかもしれない。次の日本公演にも期待大。

Nikon P7800

●皆藤千香子
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)