Sightsong

自縄自縛日記

アンドレス・ファイエル『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』

2019-03-12 00:39:07 | ヨーロッパ

アンドレス・ファイエル『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』(2017年)。UPLINK渋谷にて鑑賞。

わたしがヨーゼフ・ボイスの作品や写真から抱いていたかれのイメージは、強面で、geistが服を着ているような人。驚いた、ボイスが笑っている。そして高踏的でもなんでもなく、あらゆる者に対話とプラクシスとを通じて自らを開いている。

ときにそれは、邦題にあるような「挑発」でもあるだろう。しかしそれは開かれたひとつの形態に過ぎない。かれは「汝の傷を見せよ」と言ったという。それもまた、レヴィナスのような覚悟をもって開かれていた証拠であると思える。

ボイスは素材として脂肪を好んだ。膝の裏側で脂肪をつぶしている場面なんて声を出して笑ってしまう。かれによれば、脂肪は「運動体」「形成過程」を表現するものとして最適だった。そして「思考」を「彫刻」だとも言う。そう、開かれていて動き続けるプロセスは彫刻なのである。であるならば、開かれたことばもまた必要な彫刻にちがいない。

かれが緑の党で疎外されるに至った原因として、映画では、資本主義のことばかりを演説したからだと説明する。いま、環境問題が資本主義問題にほかならないことは常識である。ボイスは早かったのだ。

元気になる映画。みんな観たほうがいいよ。

●ヨーゼフ・ボイス
ロサンゼルスのMOCAとThe Broad
ベルリンのキーファーとボイス
MOMAのジグマー・ポルケ回顧展、ジャスパー・ジョーンズの新作、常設展ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ


塩田潮『内閣総理大臣の沖縄問題』

2019-03-12 00:11:09 | 沖縄

塩田潮『内閣総理大臣の沖縄問題』(平凡社新書、2019年)を読む。

なるほど政治ものに長けた人だけに、手際よくまとめてある。SACO合意での普天間・辺野古パッケージが沖縄の頭越しに決められたことも、確かにおさえてある。小泉以降、日本政府が沖縄の意向を考慮しなくなったことも書かれている。

しかし軽いのだ。まるで決められる政治と地方に配慮する政治との二項対立のようにも読めてしまう。こんなものではダメだと思う。 

●参照
辺野古