アンドレス・ファイエル『ヨーゼフ・ボイスは挑発する』(2017年)。UPLINK渋谷にて鑑賞。
わたしがヨーゼフ・ボイスの作品や写真から抱いていたかれのイメージは、強面で、geistが服を着ているような人。驚いた、ボイスが笑っている。そして高踏的でもなんでもなく、あらゆる者に対話とプラクシスとを通じて自らを開いている。
ときにそれは、邦題にあるような「挑発」でもあるだろう。しかしそれは開かれたひとつの形態に過ぎない。かれは「汝の傷を見せよ」と言ったという。それもまた、レヴィナスのような覚悟をもって開かれていた証拠であると思える。
ボイスは素材として脂肪を好んだ。膝の裏側で脂肪をつぶしている場面なんて声を出して笑ってしまう。かれによれば、脂肪は「運動体」「形成過程」を表現するものとして最適だった。そして「思考」を「彫刻」だとも言う。そう、開かれていて動き続けるプロセスは彫刻なのである。であるならば、開かれたことばもまた必要な彫刻にちがいない。
かれが緑の党で疎外されるに至った原因として、映画では、資本主義のことばかりを演説したからだと説明する。いま、環境問題が資本主義問題にほかならないことは常識である。ボイスは早かったのだ。
元気になる映画。みんな観たほうがいいよ。
●ヨーゼフ・ボイス
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