Sightsong

自縄自縛日記

ウィレム・ブロイカー・コレクティーフ『Out of the Box』

2020-04-12 17:06:29 | アヴァンギャルド・ジャズ

ウィレム・ブロイカー・コレクティーフ『Out of the Box』(BVHAAST、1970-2012年)。狂喜乱舞11枚組である。

Willem Breuker Kollektief

普段はボックスセットは苦手で途中で飽きてしまうのだが、これは数少ない例外である(オーネット・コールマンのアトランティック・ボックスのように)。とは言え入手してからつまみ食いみたいにピックアップしていたので、数日間をかけて通して聴いた。

わかってはいることだが、どこを切っても悦楽に満ち溢れている。ヨーロッパの集団即興ならではの感覚はこの祝祭感か。個々のブレを最大限に許容しながらピタリとあわせ、しかし個々に次々にステージ上のスポットライトが回ってくる劇場感か。それらを可能にする共同体感か。ブロイカーは要所要所でサウンドという物語を途切れさせないよう現れる。いちどだけコレクティーフの演奏を観てその姿に感嘆した。

たぶんこれは毎回同じようでいて違うのだろう(渋谷毅オーケストラがそうであるのと同じようで、違うようで)。6枚目の「Umeå 1978」では同年のコレクティーフによる名盤『Summer Music』にも収録されている「Conditione Niente」が演奏されていて、こちらのほうがはみ出しているのかなと思える瞬間もあった。

そしてクルト・ヴァイルだろうと「Sentimental Journey」だろうとショパンの「英雄ポロネーズ」だろうと他の音の連なりとなんの隔てもなく愉しんで演奏し、それが全体としての凄まじい強度につながっている。「Strings」は何人かの弦楽器が加わっていて、それが普段と違って合いの手のようでおもしろい。

いや充実。また忘れたころに数日間をこのボックスセットに捧げよう。

(取り出して読んでいたはずのブックレットがどこかに行方不明)

●ウィレム・ブロイカー
ウィレム・ブロイカーの映像『Willem Breuker 1944-2010』
ハン・ベニンク『Hazentijd』(2009年)
ウィレム・ブロイカーの『Misery』と未発表音源集(1966-94、2002年)
ウィレム・ブロイカーが亡くなったので、デレク・ベイリー『Playing for Friends on 5th Street』を観る(2001年)
レオ・キュイパーズ『Heavy Days Are Here Again』(1981年)
ウィレム・ブロイカーとレオ・キュイパースとのデュオ『・・・スーパースターズ』(1978年)
ウィレム・ブロイカー・コレクティーフ『The European Scene』(1975年)
ギュンター・ハンペルとジーン・リーの共演盤(1968、69、75年)
ハン・ベニンク+ウィレム・ブロイカー『New Acoustic Swing Duo』(1967、68年)


神田綾子+北田学@渋谷Bar Subterraneans(動画配信)

2020-04-12 14:47:06 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷のBar Subterraneans(2020/4/11)。

Ayako Kanda 神田綾子 (voice)
Manabu "Gaku" Kitada 北田学 (bcl, cl)

通常のライヴ鑑賞ではなく無観客での映像収録とライヴ・ストリーミング。もちろんウィルス感染を回避するための方法である。PC音楽の某氏がそのために来日できなくなり、このユニークなヴォイス・パフォーマーの相手として、この配信を前提として北田学さんとの新たなデュオが組まれた。グループ名はその場で「キタカンダ」と決まった(本当か?)。

短いクリップ撮影のあと(しばらくしたらクールなやつがあがってくるはずだ)、FBで配信しながらの共演。

北田さんは主にバスクラを吹いたのだが、あわせてわりと最近使い始めたというエフェクターを音に噛ませている。それにより、共鳴領域の底部が木管らしく響く低音と、裏声のごとき高音とが分かたれ、別々の声を持つ分身としてサウンドを創り出した。バスクラとエフェクターとの相性のおもしろさに惹かれるものだった。

一方の神田さんはもともと幅広い音領域において、激しいブラウン運動のように上下に左右に往還する。音波を発する場所によってサウンド全体から得られる印象は大きく異なっている。そしてバスクラやクラの音への応答としてのヴォイスもときどき聴こえる。逆に、北田さんも明らかにヴォイスに重なる音を出す(これはエフェクターを切ったときのほうに感じられた)。

やはりというべきか、想像以上で嬉しくなるというべきか、ふたりの音がもつ強度が相乗効果をもたらしている。

>> ライヴ映像

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●北田学
鈴木ちほ+北田学@バーバー富士(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
audace@渋谷Bar Subterraneans(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(JazzTokyo)(2019年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)