多木浩二『未来派 百年後を羨望した芸術家たち』(コトニ社、2021年)
いきなりイタリア未来派の本。しかも多木浩二のテキスト、読まないわけにはいかない。「なぜいま」かと言えば、未来派の中心人物マリネッティが『未来派』を書いてから百年あまり。かれらが羨望した世界などとうに過ぎ去っているし、政治との添い寝や工業からの逆襲なども体験済み。それだけに、この運動を振り返ることがおもしろいのだと思えた。
分析や情報の内容としては、ティズダルとボッツォーラによる『未来派』のほうが充実しているけれど、ここには多木浩二の視線という大きな価値がある。
ところでむかしミラノに行ったとき未来派の作品を観ようと思って観光センターで尋ねたところ、常設の美術館はないとの答え。がっかりして画集を買って帰った。
結局、未来派の作品をまとめて観ることができたのは、2014年にNYのグッゲンハイム美術館で開かれた「イタリア未来派1909-1944」だけ。いいタイミングだし日本でもなにかやらないのかな。