フィリップ・ブローム『あるヴァイオリンの旅路 移民たちのヨーロッパ文化史』(法政大学出版局、原著2018年)を読む。
音楽家になることを断念した著者が、ふと手にしたヴァイオリンの出自について調べ始めた。それはおそらくドイツ出身者が17世紀頃にイタリアに徒弟として移り住み、作り上げ、ついでに勝手に巨匠の名前を入れたものだった。
問題はそこから先。出自を調べるといっても、謎解き物語のようにすべてがつながるわけではない。訛りがあって、貧乏で二度と郷里には戻ることができず、作る楽器も訛りのようなもの。かれの動きは見え隠れし、別々のピースとしてジグソーパズルにはまったり行き場所がなかったり。しかしそれが歴史というもの、人生というものなのだった。