Sightsong

自縄自縛日記

吟遊詩人の世界@国立民族学博物館

2024-10-30 08:25:34 | ポップス

大阪の国立民族学博物館。

エチオピア、タール沙漠、ベンガル、ネパール、瞽女、志人、モンゴル、マリ。はじめてネパールを旅したときにバスの窓から売りつけてきたサーランギという楽器の歴史、モンゴルのシャーマニズムと現在のラップなんて実に興味深いものだった。

とくに瞽女さんについての展示は足を止めてじっくりと観た。瞽女唄という口承文芸は「瞽女が唄う唄が瞽女唄だ」とのことばの通り、雑多で多種多様な要素を含み持つものであった。伊平タケ、杉本キクイ、小林ハルと3人の瞽女さんの唄を聴き比べることができ、あまりのちがいに驚かされる。そして家々で受け取るコメや大きな風呂敷の旅道具による実感。展示の中には越後瞽女人形があって、「大和物産作」とある。これは僕が持っているものとたぶん同じ、横尾元則作だ。新潟の中学校教師だった人らしい。

それからラッパーの志人(シビット)による作品も鮮烈だった。それは原稿用紙に綴った詩の韻律を線でつなぎ合わせるもので、ちょっとくらくらする。

示唆するものが多いし音楽家の方々も足を運んでみては。

●参照
ヒップホップ・モンゴリア(と川崎とケープタウン)
橋本照嵩『琵琶法師 野の風景』
橋本照嵩『瞽女』
ジェラルド・グローマーさん+萱森直子さん@岩波Book Cafe
ジェラルド・グローマー『瞽女うた』
篠田正浩『はなれ瞽女おりん』


「米軍統治下の「島ぐるみ闘争」から現在の沖縄を逆照射する」@神保町月花舎

2024-10-30 04:19:37 | 沖縄

「米軍統治下の「島ぐるみ闘争」から現在の沖縄を逆照射する」と題したイベントを開催しました(2024/10/27、神保町月花舎)。

『米軍統治下での「島ぐるみ闘争」における沖縄住民の意識の変容』を上梓した村岡敬明さん(大和大学准教授)による研究内容の紹介。特定のスタンスに依ることなく膨大な一次資料を分析し「ナマの声」を蘇らせるアプローチです。それから西脇尚人さん(沖縄オルタナティブメディア)と自分を交えたトーク。たとえば次のような話題が興味深いものでした。

● 沖縄の「反復帰派」は決して少数ではなかったこと。現在の独立派へとつながる流れがあること。
●沖縄問題を語るときの当事者性。「~から問う」とのテーマ設定には主語も目的語も不在であり、「沖縄に寄り添う」という常套句には欺瞞があること。生活権・生存権を脅かされる者以外の当事者とは何者なのか。アイデンティティ・ポリティクスとは。
●「オール沖縄」という組織化に対する評価、それをめぐる言説。
●辺野古から高江に運動がどのように受け継がれていったか。
●米軍基地返還を妨げる台湾問題というアキレス腱。

【参照した資料】
川名晋史『在日米軍基地 米軍と国連軍、「2つの顔」の80年史』(中公新書、2024年)
金成隆一『ルポ トランプ王国2——ラストベルト再訪』(岩波新書、2019年)
古波藏契『ポスト島ぐるみの沖縄戦後史』(有志舎、2023年)
駒込武・編『台湾と沖縄 帝国の狭間からの問い——「台湾有事」論の地平を越えて』(みすず書房、2024年)
西脇尚人「沖縄の新聞を読む◆中 代表制の矛盾を突く」(『沖縄タイムス』、2015年4月8日)
西脇尚人「高橋哲哉氏への応答—県外移設を考える」(上、中、下)(『沖縄タイムス』、2016年3月15~17日)
村岡敬明『米軍統治下での「島ぐるみ闘争」における沖縄住民の意識の変容』(大学教育出版、2024年)
森啓輔『沖縄山原/統治と抵抗 戦後北部東海岸をめぐる軍政・開発・社会運動』(ナカニシヤ出版、2023年)

専門家・有識者と素人(これは自分)とがことばを同じテーブル上に広げる試み、頼りにするのはことばへの誠実さと知性。ちょっと続けてみたいと思っています。