Sightsong

自縄自縛日記

ウィリアム・パーカー『Alphaville Suite』

2016-12-09 19:51:52 | アヴァンギャルド・ジャズ

ウィリアム・パーカー『Alphaville Suite』(RogueArt、2007年)を聴く。

William Parker (b)
Rob Brown (as)
Lewis Barnes (tp)
Hamid Drake (ds)
Mazz Swift (vln)
Jessica Pavone (viola)
Julia Kent (celllo)
Shiau-Shu Yu (cello)
Leena Conquest (vo)

タイトルにある通り、ジャン=リュック・ゴダール『アルファヴィル』(1965年)をモチーフとした作品である。ウィリアム・パーカーは70年代初頭に、テレビでこの映画を観たのだという。ライナーノートに、「It didn’t take long for me to realize that Alphaville wasn’t just another science fiction spy thriller; it was really a wake up call to modern society to be vigilant…」と書いているように、パーカーは、この映画に、無意味を切り捨てる管理社会の恐ろしさを見出していた。もちろん、音楽やヒューマニズムは無意味の側にある。

わたしはもう20年以上前に観たっきりで、劇中の音楽のことはまったく覚えていない(検索してかじるより、DVDで改めて観ようと思う)。しかし、本盤を聴いて抱く印象は、映画の記憶からぼんやりと勝手に再構築する、うっすらとした不安と、突然、過激に理由なく人に依存するような(『マリア』での太陽の挿入に感じられたような)、そのような雰囲気とは異なる。本盤の曲はすべてウィリアム・パーカーの作曲によるものであり、自律的である。

自律的であるとは言っても、パーカーがそれぞれの曲について書いたメモを読みながら聴いてゆくと、さらにイメージが膨らんでゆく。これは音楽が文字情報に従属したということにはならないだろう。ストリングスによる多様なサウンド、とくに心の皮膚が引っ張られるような素晴らしさがあって、しかも、パーカーは常に力強いベースによってサウンドの物語世界を手放さない。

壮大なのに小品的、自律的でいて次や他の世界に開かれている感覚か。

●ウィリアム・パーカー
スティーヴ・スウェル『Soul Travelers』(2016年)
エヴァン・パーカー+土取利行+ウィリアム・パーカー(超フリージャズコンサートツアー)@草月ホール(2015年)
イロウピング・ウィズ・ザ・サン『Counteract This Turmoil Like Trees And Birds』(2015年)
トニー・マラビー『Adobe』、『Somos Agua』(2003、2013年)
ウィリアム・パーカー『Essence of Ellington / Live in Milano』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』(2010年)
DJスプーキー+マシュー・シップの映像(2009年)
アンダース・ガーノルド『Live at Glenn Miller Cafe』(2008年)
ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』(2008年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
ダニエル・カーター『The Dream』、ウィリアム・パーカー『Fractured Dimensions』(2006、2003年)
ウィリアム・パーカー、オルイェミ・トーマス、ジョー・マクフィーら『Spiritworld』(2005年)
ウィリアム・パーカー『Luc's Lantern』(2005年)
By Any Means『Live at Crescendo』、チャールズ・ゲイル『Kingdom Come』(1994、2007年)
ウィリアム・パーカーのベースの多様な色(1994、2004年)
Vision Festivalの映像『Vision Vol.3』(2003年)
ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(2001年)
ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』(2000年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2000年)
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)
ウェイン・ホーヴィッツ+ブッチ・モリス+ウィリアム・パーカー『Some Order, Long Understood』(1982年)
『生活向上委員会ニューヨーク支部』(1975年)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。