昔、VenusからESPの再発盤が続々と出されたときにはじめて知ってから、なんだかよくわからないので遠巻きにみていた『Marzette Watts』(ESP、1966年)。中古盤を見つけて、ようやく聴く気になった。
Byard Lancaster (as, fl, bcl)
Clifford Thornton (tb, cor)
Juney Booth (b only 1)
Henry Grimes (b)
Sonny Sharrock (g)
Karl Berger (vib)
J.C.Moses (ds)
Marzette Watts (bcl, ts, ss)
何しろ、マーゼット・ワッツという人が残した唯一の録音である。とはいっても、ずっと音楽をやっていた人ではなく、政治運動や絵画も手掛けていて、おそらくはニューヨークに越してきて、ヒップな仲間とともに盛り上がったドキュメントということになるのだろうね。
アミリ・バラカの妻でもあったヘッティ・ジョーンズの自伝『How I Became Hettie Jones』を覗き見すると(amazonで)、ずいぶんと奇抜な風貌で、道行くひとたちはワッツを呆然と見ていたという。
この演奏におけるワッツはというと、バスクラにしてもテナーサックスにしても、何だか頼りなく弱弱しい。明らかに聴きどころはカール・ベルガーやソニー・シャーロックらなのだ。しかし、混然一体としたエネルギーの発露ぶりはとても嬉しい印象を残す。これを時代だといってしまうと非常につまらないのだけど。