Sightsong

自縄自縛日記

ドリュー・ゴダード『Bad Times at the El Royale』

2019-02-07 08:24:29 | 北米

ドリュー・ゴダード『Bad Times at the El Royale』(2018年)。

ネバダ州とカリフォルニア州の境界の(文字通り)上にあるホテルに、FBIだのベトナム戦争帰りだのドサ回りの歌手だのカルトだの強盗犯だのがたまたま集まり、はちゃめちゃな殺人事件となってしまう。

ちょうど昨年うろうろした辺りでもあり、飛行機で再び向かう途中でもあり、詰め込み過ぎ映画なのになかなか面白かった。ネバダ州のリノはドサ回りの場所くらいに扱われていて、同じホテル内でもネバダ州側の部屋はカリフォルニア州側の部屋より1ドル安かったりする。確かにわからなくもなくて笑ってしまうが、映画の舞台となった1969年もそんな雰囲気だったのか。


レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll

2019-02-05 07:41:26 | アヴァンギャルド・ジャズ

六本木のSatin Doll(2019/2/4)。移転前にサイラス・チェスナットなんかを観に行った記憶があるが、ここははじめてだ。

Raymond McMorrin (ts)
David Bryant (p)
Gene Jackson (ds)
Riku Takahashi 高橋りく (b)
Guest:
Nanami Haruta 治田七海 (tb)
Mayuko Katakura 片倉真由子 (p)
Winter Hawk (djembe)
Toku (tp)
unknown (vo)
unknown (p)
unknown (flh)
unknown (as)
unknown (as)

ファーストセットはオリジナルの「All of A Sudden」から。もうひとつオリジナルを挟んで、「Jammin' with Jesus」。初っ端から全員が個の音を放ち嬉しくなる。ベースの高橋りくは若干22歳、はっきりした音でのドライヴ指向に聴こえる。レイモンドはそのたびにサウンドを考えては粗削りに構築し、次第に自分のペースに持ち込むスタイル。

ここでレイモンドが1曲だけ抜け、トリオで「Lonely Woman」(オーネット曲ではない方)。デイヴィッド・ブライアントの素晴らしさ満開である。サウンドの方向性という芯が形成されてそれに沿いながら、実に幅広く、思いもよらない意外な音の粒が次々に流れ出てくる。ちょっとこの曲ではマル・ウォルドロンを思わせるところもあった。終わってからかれにアホみたいに絶賛してしまった。

そしてレイが戻り、オリジナル「For My Brother Andy」。

セカンドセットは飛び入り沢山の賑やかなステージになった。オリジナル「Punch」に続いて、トロンボーンの治田七海とピアノの片倉真由子(前日と逆!)が入って「All The Things You Are」。新鮮でもあり、また片倉さんは普段着のスタンスなのか、美意識満開ではなく愉し気に弾いた。

デイヴィッドが戻り、レイがファラオ・サンダースやコルトレーンに触発されたオリジナル「Spiritual Journey」では、ジャンベのウィンター・ホークが入った。やはりというべきかノリノリでレイも「なにこれ」と爆笑。さらにジャンベがいることで、ジーン・ジャクソンのドラムスの迫力がさらに増すという発見もあった。

次に、フランス語を話すピアニストと歌手、さらにアルトが入り、「枯葉」。そしてまたデイヴィッドが戻り、トランペットのTOKU、治田七海、フリューゲルホーン、もうひとりの日本人のアルトが入って、大勢での「Billy's Bounce」。愉しい~。

最後はカルテットに戻って、デイヴィッドの「Higher Intelligence」。もうさすがである。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●レイモンド・マクモーリン
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
レイモンド・マクモーリン+片倉真由子@小岩COCHI(2018年)
レイモンド・マクモーリン+山崎比呂志@なってるハウス(2017年)
レイモンド・マクモーリン+山崎比呂志@なってるハウス(2017年)
山崎比呂志 4 Spirits@新宿ピットイン(2017年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
レイモンド・マクモーリン@h.s.trash(2015年)
レイモンド・マクモーリン『RayMack』、ジョシュ・エヴァンス『Portrait』(2011、12年)

●デイヴィッド・ブライアント
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
マリア・グランド『Magdalena』(2018年)
ルイ・ヘイズ@Cotton Club(2017年)
エイブラハム・バートン・カルテットとアフターアワーズ・ジャムセッション@Smalls(2017年)
ルイ・ヘイズ『Serenade for Horace』(-2017年)
マリア・グランド『Tetrawind』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
ルイ・ヘイズ@COTTON CLUB(2015年)
レイモンド・マクモーリン『RayMack』、ジョシュ・エヴァンス『Portrait』(2011、12年)

●ジーン・ジャクソン
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
ジーン・ジャクソン(Trio NuYorx)『Power of Love』(JazzTokyo)(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul(2015年)
松本茜『Memories of You』(2015年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)

●片倉真由子
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
レイモンド・マクモーリン+片倉真由子@小岩COCHI(2018年)
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
北川潔『Turning Point』(2017年)

●TOKU
レイラ・ハサウェイ@ブルーノート東京(2018年)


ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU

2019-02-05 00:41:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

御茶ノ水のNARU(2019/2/3)。

Gene Jackson (ds)
Mayuko Katakura 片倉真由子 (p)
Pat Glynn (b)
Guest:
David Bryant (p)

NARUでのジーン・ジャクソン2デイズの2日目。前日はピアノがデイヴィッド・ブライアントで、ゲストが沢山参加して大変な賑わいだったらしい。わたしは米国から帰国したばかりで出かける元気がなく酒を飲んでいた。

この日のピアノは片倉真由子。誰かがこの人のことをモンスターと呼んでいたが、その通りである。美学的なオリジナリティが半端なく高く、しかもそれを職人的にこなしている。

ファーストセットは、ハービー・ハンコックのアレンジによる「I Love You」から。ジーンがハービーのトリオに在籍していた時代の貴重な録音『Live in New York』(ブート)において冒頭で演奏し、またそのこともあって、ジーンの初リーダー作『Power of Love』でもやはり最初に演奏した曲である。そしてここでも片倉さんは特有の和音を響かせた。

続いて、『Power of Love』にも収録されたジーンのオリジナル「Great River」、モンクの「Ugly Beauty」。オリジナル「Lightning」では片倉さんはジーンの方を視ながら執拗に同じパターンを繰り返す。動悸動悸する。

セカンドセットは、『Power of Love』でピアノを弾いたガブリエル・ゲレーロの「Land of the Free」から始まり、片倉さんのピアノは「The Man I Love」のようでも「Rhapsody in Blue」のようでもあるきらびやかな展開をみせた。そして「A Dancer’s Melancholy」(片倉)、「Body and Soul」。ここで遊びにきていたデイヴィッド・ブライアントがシットインし、かれのオリジナル「Higher Intelligence」。浮上してきた美的なものを音に変換する片倉さんのピアノに比べ、デイヴィッドのそれには別の芯が入っている。もちろんどちらも最高のピアニストである。(年末におでんを食べて以来で、嬉しかった。)

サードセットは「Lapso」(ゲレーロ)、ジーンの「Before Then」。ここで再びデイヴィッドが入り「Sophisticated Lady」。遊び心というにはその領域が広すぎる。そして再び片倉さんに替わり、なんと「Inception」。マッコイ・タイナーのモードがこのような独自世界に融合されるのかと驚いた。

それにしても、素晴らしいピアニストふたりを同じギグで観るなんて。

●ジーン・ジャクソン
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
ジーン・ジャクソン(Trio NuYorx)『Power of Love』(JazzTokyo)(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul(2015年)
松本茜『Memories of You』(2015年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)

●片倉真由子
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
レイモンド・マクモーリン+片倉真由子@小岩COCHI(2018年)
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
北川潔『Turning Point』(2017年)

●デイヴィッド・ブライアント
マリア・グランド『Magdalena』(2018年)
ルイ・ヘイズ@Cotton Club(2017年)
エイブラハム・バートン・カルテットとアフターアワーズ・ジャムセッション@Smalls(2017年)
ルイ・ヘイズ『Serenade for Horace』(-2017年)
マリア・グランド『Tetrawind』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
ルイ・ヘイズ@COTTON CLUB(2015年)
レイモンド・マクモーリン『RayMack』、ジョシュ・エヴァンス『Portrait』(2011、12年)


蜂谷真紀+永武幹子@本八幡cooljojo

2019-02-04 07:55:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2019/2/3)。マスターの長谷川さんのアイデアによるデュオ、この日が2回目。

Maki Hachiya 蜂谷真紀 (vo, voice, 鍵盤ハーモニカ)
Mikiko Nagatake 永武幹子 (p)

初回はオリジナルだけだったというが、今回はスタンダードも織り交ぜた展開。「My Shining Hour」に続く「It Might Be As Well Spring」では、蜂谷さんが主導し、いきなりふたりとも愉しさをためらいなく発散した。独自解釈により、恋を覚えてじっとしていられない男の子のはしゃぎっぷり、途中で聴客のスマホが鳴ったがそれも即興に取り入れた。

それと比較すると、蜂谷さんのオリジナル曲では永武さんがヴォーカルに丁寧に合わせていくように聴こえた。永武さんのオリジナルではまた少し様子が異なった。

スタンダードでも曲により愉しさがちがう。アビー・リンカーンの「The World Is Falling Down」ではアビーの型破りのエネルギーが「かっとばせ!」という言葉で表出された。エリントンの「Prelude to a Kiss」や「Black Butterfly」では、やはりエリントンは曲の力だなのだなと思わせてくれた(後者はなぜか「All Blues」に移行した)。ストレイホーンの「Lotus Blossom」は、蜂谷さんが故・是安則克さんの思い出によって書いた詩をあて、「Lotus blossom / Tear drops blossom / (ねえ)教えてよ / 夜(星)へ飛び立つ君の行方」と歌った。永武さんが終盤に不協和音を入れた瞬間は見事に思えた。

今後も続いていくであろうデュオ。映像作品にしたら面白いに違いない。

Fuji X-E2、XF35mmF2.4

●蜂谷真紀
PORTA CHIUSA@本八幡cooljojo(2018年)
庄田次郎トリオ@東中野セロニアス(2018年)

●永武幹子
2018年ベスト(JazzTokyo)
佐藤達哉+永武幹子@市川h.s.trash(2018年)
廣木光一+永武幹子@cooljojo(2018年)
植松孝夫+永武幹子@中野Sweet Rain(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
永武幹子+類家心平+池澤龍作@本八幡cooljojo(2018年)
永武幹子+加藤一平+瀬尾高志+林ライガ@セロニアス(2018年)
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
酒井俊+永武幹子+柵木雄斗(律動画面)@神保町試聴室(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One(2017年)
MAGATAMA@本八幡cooljojo(2017年)
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)


フランソワ・キュセ『How the World Swung to the Right』

2019-02-03 09:56:15 | 政治

フランソワ・キュセ『How the World Swung to the Right - Fifty Years of Counterrevolutions』(Semiotext(e)、原著2016年)を読む。

フランス語の原著からの英訳版(2018年)である。先日ロサンゼルスのギャラリーHauser & Wirth併設の書店で「Resistance & Dissidence」(抵抗と反体制)という小特集を組んでいて、そこで入手した。

世界はいかに右傾化したのか。サッチャー政権・レーガン政権の80年代、ベルリンの壁崩壊・ソ連崩壊後の90年代、そして9・11後の00年代。著者は主に1980年からの30年間を切り出してその変化を手際よく説明している。それは鳥瞰的に視れば概説に過ぎない。しかし、その間に、右翼と新自由主義が手を組むのではなく、左翼が別の世界システムを構築していたならまた別の世界がありえたかもしれないという指摘は、鳥瞰ならではである。そして左翼・右翼という雑なタームの揺らぎもまた、著者の視野に入っている。

主に00年代以降のインターネット時代については、あらためて思想の観点から見つめようとしていることも、本書の特徴である。それをフェリックス・ガタリが投じたコインに遡っているのだけれど、1992年に亡くなったかれを含め、ロラン・バルト(1980年物故)、ミシェル・フーコー(1984年物故)、ジル・ドゥルーズ(1995年物故)、ジャック・デリダ(2004年物故)、あるいはクロード・レヴィ=ストロース(2009年物故)まで、フランスの偉大な思想家たちがこの時代に姿を消したことを、右傾化に歯止めをかけられないことの象徴として見ているようでもある。そのことは、現代日本での「思想」のひどいありさまを一瞥すると実感できる。

本書の書きぶりは次第に絶望と希望とがあい混じるようになってゆく。しかし最後はやはり希望なのである。なぜなら新自由主義的システムは限界点・閾値を踏み越えつつあるからだ、というわけだ。

「It (※新自由主義的システム) will not be toppled in a day or in a year, but once all the thresholds of the tolerable have been crossed. When the uprising will occur is now just a question of time. And the new form it will take, a form that must be invented, is just a question of imagination. Luckily, many people everywhere are working toward this, taking the time they need. Just like that slogan that activists in the 1990s painted onto the front of a large investment bank, "You Have the Money, but We Have the Time."」


ジェームス・ブランドン・ルイス『An UnRuly Manifesto』(JazzTokyo)

2019-02-03 08:54:20 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジェームス・ブランドン・ルイス『An UnRuly Manifesto』(Relative Pitch Records、2018年)のレビューを、JazzTokyo誌に寄稿しました。ジェイミー・ブランチのプレイも含めて大傑作。

>> #1586 『James Brandon Lewis / An UnRuly Manifesto』

Jaimie Branch (tp)
Luke Stewart (b)
Warren “Trae” Crudup III (ds)
Anthony Pirog (g)
James Brandon Lewis (ts)

●ジェームス・ブランドン・ルイス
ジェームス・ブランドン・ルイス+チャド・テイラー『Radiant Imprints』(JazzTokyo)(-2018年)
ジェームス・ブランドン・ルイス『No Filter』(JazzTokyo)(-2017年)

●ジェイミー・ブランチ
『別冊ele-king カマシ・ワシントン/UKジャズの逆襲』の特集「変容するニューヨーク、ジャズの自由(フリー)」
アンテローパー『Kudu』(2017年)
マタナ・ロバーツ「breath...」@Roulette(2017年)
ジェイミー・ブランチ『Fly or Die』(-2017年)

「JazzTokyo」のNY特集(2017/9/1)

●ルーク・スチュワート、ウォーレン・”トレエ”・クルーダップ3世
「JazzTokyo」のNY特集(2018/12/1)(ブラックス・ミス)
ジェームス・ブランドン・ルイス『No Filter』(JazzTokyo)(-2017年)