こないだの宣言通り、「ドキドキ文芸部」(無印)をとりあえず一周完了。
今回は深刻なネタバレはしない範囲で書くと、この作品の根幹にあるのは、「恋愛ADVのキャラクター性」だと私は思う。その設定や思考態度というものは、メタい発言をすれば、「短期間で主人公と仲良くなる必然性を担保する」という製作上の都合に基づいている。
ただし、それらをメタではなくベタ(リテラル)に捉えると、愛着障害など「コミュニケーション方法に何らかの特殊性や機能不全を抱えた人物たち」という見方、つまり色々な仕方で距離感がバグっている人たちになるわけだけど、その様態をそのままゲームにしたのが本作ではないか、ということだ(ちなみに、「普通」の絶対的基準が存在しないように、他者との関係性でこれこそが絶対的正解なんてのも存在しないわけで、むしろその「普通」に過度に固着することもまた神経症的と言えるんだが)。
これについて、先行する作品としては「CROSS ♰ CHANNEL」あたりが最もわかりやすいと思うが、心理学者である名越康文の実況動画もあるので、興味がある人はそちらを参考にするのもよいだろう。
なお、自分の評価としては、正直「あのキャラクター」がなぜそこまで主人公に執着するのかがよくわからんかったので、あーそういう感じの作品なのね~という感想にしかならず、「トリッキーではあるけどそこまで印象に残らない」というのが現時点での正直な感想である。
この手のものって、「euphoria」とかもそうだけど、その狂気とか超越性(ただし本人たちにとっては「自動的」に為される思考態度)を担保するための背景を丁寧に描写するか、あるいは「沙耶の唄」みたいに、そもそも主人公たちに同情しやすい仕掛けを音楽・画像・音声などで十二分に張り巡らせておくとかしないとキツいんよね(もちろん名前とかの符牒で伏線はあるのだが、それは単に特異性が予測できるだけで、何か深い思考や分析を要求するものと少なくとも自分は感じなかった)。まああえてそれらを描かないことで、ホラーや笑いにするって手法は全然あるんだけども。
ただ、終盤に見られる「プレイヤーからインタラクティブ性を奪うことにより、一方通行の愛情を表現する」という演出は、ゲームの特性を活かした興味深いものだった(このインタラクティブ性の話は、割と近いうちに「君が望む永遠」との兼ね合いでまた書くことになるだろう)。
なお、今述べた「一方通行の愛情」に関して言うと、例えばメンヘラとかヤンデレなどはそのキャラクターが消費され過ぎて忘れられがちだが、基本的にそれらの重要なファクターは「論理の飛躍」と「支配」である(「メンヘラ解体新書:その行動・言動の根底にあるものを理解する」)。
このことを忘れ、ヘラっている表面だけ見て可愛いだの何だのという向きもあるが、その性質は四六時中監視・介入してくる毒親やブラック企業と同じなので、そう遠くないうちに精神が疲弊・破壊され、関係を切るか生きる屍になるしかない・・・というヤバさは改めて認識しておくべきだよなあと思った次第。
ちなみにプレイしてて思ったこととして、登場人物たちがもはや自分の子どもの世代なんで、やり取りが微笑ましいというか、まあ君ら色々大変かもしれんけど幸せになってくれよ・・・という感情になり、ああ年を食ったなとw結末はともかく、ルートは必ずしも一本道ではないようなので、自分の感想の検証も含め、もう2周くらいしてみようかなと思っている。
ところで、今は「フラテルニテ」より先に「ウーマンコミュニケーション」を始めた。まだ序盤だが、何とはなしに「あ~、これは抑圧をテーマにしてるっぽいな~」という雰囲気を感じている。その意味では、ドキドキ文芸部とは違った視点で恋愛ADVというか、人間との関係性などを考えていく上で興味深い作品となるかもしれない。
まあどれだけ表面的に言葉を狩ったところで、それに該当する感情が無くなるわけではないので、その剝奪が差別などを根絶することにはならない・・・てのは肝に銘じておく必要があるわな。
だから例えば、過度なルッキズムを批判するのは理解できるけれども、例えば会社の打ち合わせで身だしなみがきちんとしている人とボロボロの人がいたらそれぞれにどういう印象を持つかを考えてみれば明らかなように、そもそも視覚情報に相当程度頼っている人間に人を見た目で判断するなと言っても限界があるわけで、それを無視したルッキズムへの警鐘は、人間という名のサル(動物)を過大評価した思い上がりとさえ言えるだろう・・・とか何とか(・∀・)まあそういう発想というか戒めもあって、ワイは「社会」の領域での発想法はリベラリズムと同時にリバタリアン・パターナリズムを基盤にしてるわけだけれども。
何とはなしにそんなことを考えとりますが、まあまずは一周やり通してみようと思いマス。
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