ビースターズ:愛おしき者たちへに贈る讃歌

2019-02-19 11:43:07 | 本関係

 

『ビースターズ』を昨日12巻まで読破しました。何?このにわかがって?さてはアンチだなオメー(←開き直り)。いやー、クッソ面白かったっすわ。次が気になりすぎて日曜朝から仕事だっちゅーのについ夜更かししてまいました( ̄▽ ̄;)

 

もう描写の一つ一つが秀逸で、たとえば主人公が人質を取ったのに、「人質にとる気なんてないだろ。言いたいことがあるならさっさと言え」とやや呆れながら返す人質(ネタばれなしの方向で説明しておりマス)。そのやり取りが全然不自然に見えない上に、これがまた絵になってるんだよねえ(*´ω`*)

 

もちろん、テーマの描き方も上手い。その中心である「共生」については今さら言うまでもないが、その難しさを、動物であるがゆえのどうしようもなく付きまとう差異を絡めて書いているため、(共生の知恵も含めて)思わず考えさせられる。また12巻の頭で終わるとある話の結末は、つまるところ「正義」には代償がつきまとうことを示している。加えて、「何も『悪いこと』をしていないのに、それがスティグマとなる社会はそもそもおかしい」といったより大きな枠組みへの批判的な視座にもなっているのである(読んだ人には何の話かわかると思うんで、これ以上説明しません)。しかも、人間ではなく獣を通して描かれるからこそ、ある特定の人種や階層の性質に還元できない一般的性質を持ち、受け手に思考を促さずにはおかないのだ。

 

ということで非常に読みごたえがあるわけだが、それ以上に俺を引き付けたのは・・・登場人物(ビースト?)たちへの愛おしさである。なるほど可愛らしいキャラを愛でたくなることは他の作品でもある。しかし、ビースターズのキャラの愛おしさは(ゼロとは言わないが)そういう庇護欲的なものではない。登場する誰一人としてモブではなく、またそれぞれがそれぞれの背景を負って生きている・・・その様が言いようもなく愛おしく感じられるのだ。保身に走る者、意図せず他者を傷つけてしまう者、己へのスティグマに苦しむ者、批判を気にせず我が道を行く者・・・様々なキャラクターが存在する上に、しかも個々のキャラクターが色々な要素を抱えるプリズム的存在として描かれている(ルイパパなんかその典型ではなかろーかwあのギャップは反則そのものだが、同時にそれは強面の人間が内面もそうとは限らないということを表すし、そこからするとビジネスライクは不器用さの表現とも見て取れる、という話になるetcetc...)。そしてそれを説教臭くなく、ある時は突き放して、ある時は寄り添って描くその優れた筆致が、きっとそれぞれの存在を受け手にとってグッと近いものにし、ゆえに愛おしく感じられるのではないか?とそのように思う次第である(自分がこれまで読んできた作品の中でも、愛を感じるレベルとしては三指に入るだろう)。

 

まあそもそも、ビースターズに先行する短編『ビースト コンプレックス』では、学園以外にもテレビ番組=メディアなど子ども以外の世界も巧みに描かれており、作者のキャラクター造形力と物語構築力が図抜けていることがよくわかる。それを少年誌での連載モノにするため学園を舞台にし、主人公を学生にしたというだけのことだ。そして今はいよいよ、学園の外に出てさあこれからどうなるか・・・って話で非常に楽しみである。

 

アニメ版は色使いやキャラクターの動きが極めて重要になってくるだろうが、それがどう表現されるかに期待したいところだ。


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