森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

タニウツギ(スイカズラ科)

2006年07月13日 | 自然観察日記
 花の最も良い時期は過ぎてしまったがまだ所々で見られる。タニウツギは雪国のそれも日本海側の植物だ。雪解けが終わった沢筋に一斉に咲きだす桃色の景色は雪国ならではの美しさがある。
 タニウツギは雪が滑り落ちるような斜面に多い。雪解けの土砂崩れが多い越後だが、敢えてそんなところを住処にしている感じがする。しなやかでしかし根張りがしっかりしている。だから、それを逆手にとっての土留め工事で活用されているというわけだ。
 越後には「糧飯(かてめし)」という言葉が残っている。「糧(かて)」とは、タニウツギやリョウブの新芽を乾燥させ保存した物で、かって貧しかった頃のご飯の「増量材」であったという。食したことはないが、土地に暮らす先人の知恵と工夫がしのばれる話である。
 それに、こんな綺麗なタニウツギなのに土地の人は忌み嫌う風習もある。「火事花」というのだ。家に持ち込むと火災になるということだろうが、同じものを見ているのだが時代によって見え方が違うのだろうか。何か別の理由があるのかもしれない。