森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

ノリウツギ(ユキノシタ科) 駒止湿原にて その9

2006年07月27日 | 自然観察日記
 ノリウツギは何処にでも見られる植物という印象で、この駒止湿原にも沢山ある。越後の山野を歩き回って、この時期のアジサイは青はエゾアジサイ、白はノリウツギと思えばいい。もっとも中越地方にはタマアジサイが分布していないから単純に区別できるし、太平洋側のヤマアジサイのような白いものが無いからである。
 ノリウツギは樹皮から和紙を作るさいに必要な「ねり」の原料となったことからこの名前がある。同じように利用されるトロロアオイも「ねり」の原料だそうだ、ノリウツギの分布していない地域ではないだろうか。
 里山から和紙の原材料であるコウゾやミツマタを調達し、そして紙すきに必要な「ねり」も里山の植物を工夫し利用する古人の知恵や技に素直に感銘を受けている。

トキソウ(ラン科) 駒止湿原にて その8

2006年07月27日 | 自然観察日記
 佐渡の朱鷺に花色が似ているところから付けられた可愛い美しい花だ。実際は花色の変化は大きく純白のものもあるという。明るい湿原なら何処にでも見られたが、湿原がどんどん開発されてなくなることが脅威で絶滅危惧II類に分類されてしまった。
 トキソウに限らず日本の野生植物はそのほとんどが絶滅危惧種といって過言でないかもしれない。植物は勝手に何処にでも生活できる訳ではない。微妙な環境との調和のもとでその生存が成り立っている。その産地のものが無くなったから、他産地のものを簡単に移植してもいいものだろうか。それを増殖して自然保護が出来たと自賛するのはやはり疑問が残る。
 同じ意味で、絶滅した日本の朱鷺の代わりに中国の朱鷺を増殖し野性に放すプロジェクトを手放しで歓迎する立場にはなれない。