森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

タヌキモ 1

2010年08月03日 | 自然観察日記
里山の水田を湿地に改変し数年、農薬を使わないでそのままにしておくと絶滅しかかった植物が次々に復活してきます。
熱い夏の日差しの中湿地の植物を観察していると、マツモやイトモなどが繁茂している湿地に日照りのため水量が少なくなってこれらの藻が重なり合っている上に黄色の花を見つけました。タヌキモです。現物を見るのは何年振りでしょうか。過去には水槽に入っているのを見たことはあるのですが、自生しているのをこの目で見るのは生まれて初めてです。大感激ですが、周りの人にはその感激がそのまま伝わっていないことが残念です。

タヌキモ 2

2010年08月03日 | 自然観察日記
10本ほどの花茎が上がっていますから、およそそれくらいの株があるのでしょうか。さまざまな藻が絡まりあって見た目では区別が付きません。この湿地は流入する水が少なく、水温が高く表面には細菌の繁殖もあってか赤く混濁しています。
それはそうと、なかなかかわいい黄色の花。この湿地に新しいスターが誕生した感じです。秋の中ごろまではこの花を楽しむことが出来ると考えています。周りにはもうミズオオバコも花を見せ始めました。復活した自然を楽しむことが出来ますよ。

タヌキモ 3

2010年08月03日 | 自然観察日記
タヌキモは実は食虫植物で、葉に捕虫嚢(のう)を作って水生の微小生物を捕らえています。写真の丸いものが捕虫嚢で新しいのは緑色をしていますが、古くなると褐色になっています。付け根に取り入れ口があるそうで、中が陰圧なので虫が入り口にふれると吸い込まれるという話です。どんな虫が捕らえられるのかは顕微鏡で観察しないと判然としませんね。
根はなく水面に漂って生活をするのですが自身を安定させるために、他の水草が繁茂するところに一緒に生活しているようです。

タヌキモ 4

2010年08月03日 | 自然観察日記
花が出来るのですから種子も出来ると思いますが、文献ではタヌキモの種子はほとんど出来ないのだそうです。何で冬を越すのかというとこの葉の塊、越冬するときはもっと丸くなって「殖芽」といわれるものになって水底に潜んでいるとのこと。変わった習性ですね。
タヌキモは絶滅が危ぶまれている種ではありますが、近年環境の保護が進んでいることもあって各地の湿地から生息が確認できるようになってきているといわれます。