森の案内人 田所清

自然観察「独り言」

マルハナバチと花の形 ①

2012年10月31日 | 自然観察日記
そろそろ終わりになっているキバナアキギリの花に潜り込んでいるマルハナバチをとらえた1枚です。ここと思えばまたあちらでなかなかいい写真にならないのです。この秋は結構マルハナバチを観察していました。そこで確信したことはこのハチと共進化しているのが秋の代表的な花であるツリフネソウとアキギリではないか・・・と。いずれもマルハナバチが入れるようなぽっかりとした穴を開けている構造の花です。それもマルハナバチにサイズを合わせて・・・。マルハナバチが最も活動的になる8月以降に花の盛りを持ってきている種ではないかと・・・。ツリフネソウは8-9月、キバナアキギリは9-10月。この里山では実にうまく両種が絡んでいるように見えるのです。もっとも春にはマルハナバチはいるはずです(あまり気づかない)が、短日性の花はマルハナバチと手を組んだ一群が繁栄の一翼を担っています。これ以外にタデの仲間はどうもミツバチ系と手を組んでいるのではと推測しています。

マルハナバチと花の形 ②

2012年10月31日 | 自然観察日記
ツリフネソウ(白花)に来ているマルハナバチを狙ったのですが上手くいかないので、ピンボケの写真でスミマセン。マルハナバチが花に潜らなくて、花の後部に口吻を差し込んで盗蜜する話は有名ですからご存知の方も多いと思います。ハチの動きを見ているととても面白いですよ。確かに盗蜜するものいますが、真面目に潜り込んで吸蜜し受粉に一役買っている者もいます。ひょとしたら別種なのかもしれませんが、盗蜜する個体は決して花に潜り込むことはしません。ハチは一度決めた行動はなかなか修正がきかないのだと思います。
ところが、気温が低くなってくるとツリフネソウの花が小さくなってきます。そうするとどんなサイズのマルハナバチでも入れなくなってきて、ハチにとっては盗蜜するしか蜜を手に入れる手段がなくなる時期が来ます(実はこの頃にはキバナアキギリが咲きだしていますから、ハチは浮気をしてツリフネソウからアキギリに乗り換えていますが・・・)。マルハナバチと縁が切れたツリフネソウはそれで終わりかというとそうではなくて、実はもう一段階のドラマがあるのです。ツリフネソウは1年草ですから種子を残さないと種は続きません。ハチによる他花受粉ができなくなると自家受粉のみで種子を形成するのです。花は小さいのに立派な実を付けるのが実に多くあります。それどころか完全な花にならないうちに結実し花を落としてしまいます。枯れそうなツリフネソウでも茎の下の方にか細い枝が出ていてそこに小さな実を付けているのを見たことがありませんか?
近縁種のキツリフネは「閉鎖花」を普通につけることが知られていますが、ツリフネソウもほぼこれに準じて種子生産を行っているのですね。寒さで限界になるまでこの営みは続いています。一つでも多くの種子を作って死んでいくのです。自然って本当にすごい!

キツリフネ 閉鎖花で結んだ果実

2012年10月31日 | 自然観察日記
キツリフネはツリフネソウ以上に自花受粉を行い種子を作ります。今年は気候の具合でしょうか「花」を見せなかった自生地が多かったのではないでしょうか。丘陵公園の里山フィールドミュージアムではほとんど「花」を見せませんでした。しかし、しっかりと閉鎖花を作って種子を作っています。