地味なラン科植物です。いろいろ写真を照らし合わせてホソバノキソチドリと判断しました。亜高山帯の草地に生育するとあり、栂池自然園の入口の草むらに自生していたものを写しました。キソチドリは普通は林の中で見かけますがこの種は日当たりのよさそうな草むらでした。
かなりピンがボケた写真ですが、葉の様子をカメラに収めておいたのが良かったようでこの写真で近似種のコバノトンボソウと区別することができました。コバノトンボソウは茎に葉が1枚というのが重要な形質ですが、この個体は2枚の葉がついています。
日本海側高山に生育するベニバナイチゴですが栂池自然園でも至る所にで見られました。花の季節に訪れましたから見ごろの花もたくさん。キイチゴ類のなかで唯一白い花ではなく赤紫色。ユニークな存在です。藪状態で生育しますから繁茂した場所は踏み込むことが困難になります。他のキイチゴ類と違って棘がないので気になりませんから、かき分けながら前に進むことはできます。昔々、飯豊の大日岳の片に野営した時にこのベニバナイチゴと格闘したことを思い出します。
花の季節から半月後に再び栂池に訪れたときに見つけたベニバナイチゴの実です。7月下旬ですからまだまだ若い状態。もう一月もすれば赤く熟します。それにしても、この果実、かなり貧相です。子房が膨らんでいる雌しべは数えるほどで、結局受粉しなかった雌しべがまるで毛のように花卓についています。昨年はポリネーターの活躍が不十分だったようですね。
この種も高山・亜高山帯の湿地の定番に近い種でしょうか。個体群密度が大きい場所は知りませんが、高海抜の湿原などでは大体みられる気がします。シオガマの中では花の色の違いが際立っていますから多少遠目でもそれとすぐにわかります。
花の形がユニークで左右対称とはいきません。形がゆがんでいる花はそれほどありませんが、こういう形状になった理由があるはずで、それを考えても思い浮かびません。全体的に花は螺旋形に茎についていますから、一つ一つの形状より花序全体に考える必要があるのでしょう。別種にトモエシオガマという近似種もありますから「巴」の構造が有利に働く場面があるのかもしれません。
別名ミヤマガラシ。ヤマガラシとミヤマガラシが同じものと知ったときはちょっと驚いたものです。この種も垂直分布の広い種としされていますが、高所に生育するものと低地に生育するものが結局区別しないということなのでしょう。昨年月山の山頂でも見ましたから高山帯に生育することは分かりましたが、低地帯での自生をまだ見たことがないので個人的な確認は持ち越しです。ちなみに新潟県の分布を調べてみましたが、低海抜での採集記録はなくいずれも県境の高山帯でやや希に見られるようです。カラシというからには辛み成分は含まれていることでしょうが、あいにくここでも試食をしていません。
栂池自然園は高山種もあれば低山にも見られる種も生育していて垂直分布を考えるにはいい場所かもしれません。ツガザクラは高山種の代表的なもので夏の高山では普通に見ることができます。そういう意味では見慣れた花ですが、高嶺の花には違いありません。ただ、色を除いては「サクラ」には見えないので名前としては相応しくないと個人的には思っています。