山里の国道は峩々とした山塊を縫って続いていく。いま、その崖の緑からは白い花が飛び込んでくる。迫力あるのは白い葉の「マタタビ」が数十mもの高さで伸びていることだった。また、お決まりの「ウツギ」と「マルバウツギ」の競演もたびたび見られた。
白い花では共通しているが、「マルバウツギ」と「ウツギ」の葉や花は全く違う。マルバウツギの葉は卵形だが、ウツギは細長い楕円形が多い。マルバウツギの花は上向きに平開しているが、ウツギの花は下向きの鐘形となっている。
「ウツギ」は、旧暦4月の卯月に花が咲くことから命名されている。唱歌「夏は来ぬ」では「卯の花のにおう垣根に」と謳われているが、ウツギの匂いはほとんど感じられない。これはどういうことだ。
万葉集では「匂うがごとくいま盛りなり」と表現されるとおり、この「におう」とは、匂いではなく花の盛んな美しさをさす、という。これで納得、チャンチャン。