原題:『GANTZ:O』
監督:川村泰
脚本:黒岩勉
出演:小野大輔/M・A・O/郭智博/早見沙織/池田秀一/津嘉山正種/梶裕貴
2016年/日本
物語の緊張感を一気に失わせる「解放」と「帰宅」の違いについて
『君の名は。』(新海誠監督 2016年)と乃木坂46の新曲『サヨナラの意味』(柳沢翔監督)のMVの対称性は物語に関してであり、言うまでもなく『君の名は。』は映像の美しさも特筆に値するが、画のタッチは違うものの同様に高く評価されるべき作品がフル3DCGアニメ映画の本作だと思う。あの山咲杏やレイカの風でなびく髪の毛の美しさは現実を超えていると言ってもいいだろう。
このように画に関しては申し分ないのであるが、どうしてもラストのオチが納得できない。サバイバルゲームが終わりGANTZの部屋に戻って来た加藤勝たちは点数を付けられ、加藤は100点満点を取る。加藤の究極の選択肢は「新しい強い武器を得る」「死んだ人を一人生き返らせる」「すべての記憶を消して解放される」の3つであり、加藤は山咲杏の命を救うために「死んだ人を一人生き返らせる」を選ぶのである。実は加藤はかつてGANTZの部屋に来たことがあり、満点を取り「すべての記憶を消して解放される」を選んだ経験があり、その事実をその時も同じ部屋にいたレイカや鈴木良一は敢えて教えない。そこまではいいのだが、その後加藤は「一時帰宅」と称して弟の元に帰ってしまうのだが、これでは「すべての記憶を消して解放される」という選択肢の一つの究極性が揺らいでしまうのではないだろうか。しかしネットで検索してみてもこの「解放」と「帰宅」に関して不思議に思う人がいないのがさらに不思議なのである。