MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『札幌・横浜・名古屋・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』

2016-11-06 20:00:42 | goo映画レビュー

原題:『札幌・横浜・名古屋・雄琴・博多 トルコ渡り鳥』
監督:関本郁夫
脚本:関本郁夫/猪又憲吾
撮影:中島徹
出演:芹明香/東龍明/山城新伍(ナレーション)
1975年/日本

「男性」としてのトルコ嬢について

 主人公の三浦ひろみは青森県下北郡東通村出身の20歳で、トルコ嬢として働いており、そのヒモとして行動を共にしている渡辺利夫は和歌山県出身の27歳である。メインストーリーはタイトル通りにひろみが利夫を連れて各地のトルコ風呂を巡っていくロードムービーであるが、平行してトルコ風呂の様子がドキュメンタリータッチで意外と長尺で挿入される。しかし女性専用のトルコ風呂として「伯爵」という店が紹介されており、どこまで事実なのかよく分からない。
 さらには中ピ連の榎美沙子(当時30歳)やトルココンサルタントと称する人物や漫画家の黒鉄ヒロシ(当時30歳)などがそれぞれの見解を披露しており、黒鉄の、精神論で性欲を克服せよという非現実的な意見を押し付けるより恋人ができない男たちが女性と遊べる場所は必要だろうという意見が妥当だと思う。
 ひろみが出身地の田名部に帰郷した際に、ドキュメンタリー部分ではメキシコ系アメリカ人を父親に持つ女性が、日本人の母親が経営していた店がつぶれたための生活費を工面するためにトルコ嬢になったと告白しているのだが、村の世間体を気にするひろみ自身は親に会うこともなく何も言わずに帰ってしまう。
 パチンコに夢中で目を離している間に飼い犬を死なせてしまい、さらにはヒモがプロの女性を相手にするというタブーを犯したことでひろみと利夫は喧嘩になり、ひろみは出て行ってしまうのであるが、やはり淋しさに打ち勝つことができず、山形の酒田駅前で再会し旧の鞘へ収まるのは良いのだが、本作はポルノ映画というよりも、トルコ風呂を巡る考察で、冒頭で部屋から外へ放尿し、中盤で車の窓からビールを垂れ流し、ラストで列車の最後尾から放尿するひろみはあくまでも「射精する男性」であるという強い立場の暗喩など素晴らしい演出であるが、当時の観客が満足したのかどうかは疑問である。


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