MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『スローターハウス5』

2018-04-16 00:25:33 | goo映画レビュー

原題:『Slaughterhouse-Five』
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
脚本:スティーブン・ゲラー
撮影:ミロスラフ・オンドリツェク
出演:マイケル・サックス/ロン・リーブマン/ユージン・ロッシュ/シャロン・ガンズ
1972年/アメリカ

「戦争と平和」の解釈の仕方について

 第二次世界大戦でドイツ軍の捕虜になった経験をし、戦後、全米眼科医協会の会長として活躍したビリー・ピルグリムは、引退後、時空を超える超能力を持つようになったが、ビリーの娘のバーバラは父親の頭が変になったと思っている。
 彼は自分の部屋に籠りながら、戦時中に過ごしたドイツのドレスデン、眼科医の時代、そして未来で過ごす惑星トラルファマドールを行き来する。過去・現在・未来をワープするきっかけは似たような体験をした時に起こり、例えば、ビリーがドイツの捕虜収容所でシャワーを浴びている時、彼が子供の時にプールでシャワーを浴びている過去にワープするのである。ビリーがドレスデンで体験した連合軍による爆撃は、彼に大きなショックを与えたが、辛かったのは戦争時だけではない。息子のロバートが警察に補導されたり、自分のチャーターした飛行機に爆弾が仕掛けられたり、そのことを知った妻のヴァレンシアが病院に車で向かう途中で事故で死んでしまったり、しかし自分はその飛行機の爆発で大勢の乗客の中ただ一人奇跡的に助かったりする。
 つまり戦争時が必ずしも不幸ではなく、平和な時が必ずしも幸福なのではない。例えば、『M★A★S★H マッシュ』(ロバート・アルトマン監督 1970年)において登場人物たちは戦争時を楽しんでいさえする。ビリーは様々な経験を通して、悪いことは無視して楽しいことだけに執着するようになった。その結果、ラストシーンで、彼は惑星トラルファマドールの住人となり、彼の憧れの女優モンタナ・ワイルドハックと何不自由なく幸福に暮らせるようになる。戦争することは容易いが、戦争を語ることはいまだに難しい。


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