現在、東京の三菱一号館美術館では「ルドン - 秘密の花園」が催されている。
オディロン・ルドン(Odilon Redon)という画家は不思議な人で、世代的には印象派の
画家たちと同期となるのだが、印象派の画家たちの作風を否定するかのごとく版画による
モノクロの奇妙な作風を発表する。
(『ドムシ―男爵夫人の肖像(Portrait de Mme. de Domecy)』1900年)
代表作とされているものが奇妙な作品ばかりであるが故に誤解されているよう
なのだが、ルドンは描写が下手というわけではなく、上の作品を見ても、あるいは
本展の中で『日本風の花瓶(Fleurs dans un Vase Japonais)』(1908年)の、
他の花瓶の絵と比べて陰影をもちいて緻密に描かれている花瓶の描写を見ても
画家としての腕の確かさは疑う余地はない。
ルドンの作品は1890年頃、ルドンが50歳になった頃からカラフルになるのだが、
それは印象派の画家たちのような光学的な観点によるものではなく、むしろ素材や
筆致の工夫による原点回帰のように見える。ルドンの関心は光学的なものよりも生物学や
文学などに向かったのである。つまり存在しないものに光学は無意味であり、やがて
象徴派と呼ばれるようになるのだが、ルドンの作品は後のアンリ・マティス
(Henri Matisse)やワシリー・カンディンスキー(Vassily Kandinsky)や
ジョアン・ミロ(Joan Miró)などスタイルを越えて多大な影響を与えていると思う。