原題:『Two Rode Together』
監督:ジョン・フォード
脚本:フランク・ニュージェント
撮影:チャールズ・ロートン・ジュニア
出演:ジェームズ・スチュアート/リチャード・ウィドマーク/リンダ・クリスタル
1961年/アメリカ
1880年代のアメリカの「芸術」の状況について
金銭目的のために、保安官のガスリー・マケーブは友人で中尉のジム・ゲイリーと共に、数年前にコマンチェ族にさらわれた家族を探すために移住民として放浪している白人たちに代わって、彼らを救い出すために商人として敵地に乗り込み、その結果、銃を売る代わりに、九年くらい前にさらわれた十七歳になるランニング・ウルフと呼ばれる少年と、五年くらい前にさらわれた二十歳くらいのエレーナと呼ばれる娘を連れて帰ってくる。
しかし戻って来た彼らに対して人々は冷たかった。ウルフは英語が喋れなくなっており、コマンチェ族にさらわれたのは彼らの落ち度ではないにもかかわらず、環境の変化というものはお互いの意志の疎通を困難なものにしてしまう。これほど同類の中における異質さ、あるいは微細な異質さというものはお互いが似ていれば似ているほど嫌悪される。
しかしこの点では、はぐれ者のマケーブも本来嫌われるはずで、実際に嫌われてはいるのだが、それでも保安官としてやっていけるのは自分の異質性を個性として打ち出しているからであろう。
ラストシーンのダンスパーティーでエレーナが自分の想いを述べざるを得ない理由は、それが「エレーナ」という個性の宣言だったからである。一方で不幸にも言葉が通じないウルフは、「偽」の母親であるメアリー・マッケンドレスを殺してしまい、本物の姉のマーティ・パーセルと再会しそびれて処刑されてしまう。彼が唯一理解できたのは、彼が幼いときに聞かされていたオルゴールの音色だけである。芸術の力がまだ軽く見られていた1880年頃の物語である。