『笑ゥせぇるすまん』の再放送を見ているのだが、「自画自賛」という回にはストーリーに疑問を持った。
主人公の伴護保は売れない画家で街中で似顔絵を描いて糊口を凌いでいる。
伴はフィンセント・ファン・ゴッホを崇拝しているのだが、そこに喪黒福造が現れ、伴とゴッホの違いはパトロンがいるかいないかだと指摘する。確かにゴッホには画業を支えてくれた弟で画商のテオがいた。そこで喪黒は伴に成金(なりかね)という後援者を紹介し、伴は自分専用のアトリエを得たことで画業に専念できるようになる。伴は喪黒に「芸術家としての魂は売るな」と言われていたのであるが、そんな伴に成金はポール・ゴーギャンの複製画を依頼してくる。
伴はゴッホを裏切ったゴーギャンの絵を描くことに抵抗があったのであるが、背に腹はかえられず引き受けてしまう。もちろん喪黒がそんな伴を許すはずもなく、芸術家としての魂を売れないように伴自身がゴッホにされてしまうのである。
しかし果たしてゴーギャンはゴッホを裏切ったのだろうか。むしろアルルで画家の共同組合を提案したゴッホに唯一応じた画家がゴーギャンなのだからゴーギャンはゴッホを認めていたのであり、ゴッホの方がゴーギャンの手法を認めなかったというのが正しいのである。もちろん伴がそのように誤解しているというストーリー設定であっても構わないのではあるが、それがストーリーに反映されていないところが問題なのである。