原題:『スパルタ教育』
監督:舛田利雄
脚本:佐治乾/中野顕彰
撮影:高村倉太郎
出演:石原裕次郎/若尾文子/渡哲也/小池修一/川口英樹/青木義朗/谷村昌彦/小高雄二/川地民夫/田崎潤/金田正一
1970年/日本
「スパルタ教育」について
タイトル通りならば当然主人公で父親の田上悠三が五人の子供たちに対して厳しい教育を施すと思っていたのだが、プロ野球のアンパイアという仕事柄、家にいることが少なく、放任主義の下で団地に住む田上家の子供たちは父親に遊んでもらえない鬱憤を団地内で晴らすのだが、例えば、石を投げて他の住人の家の窓ガラスを壊したり、花が植えられた鉢を次々と壊していったり生ごみが入ったゴミ箱をひっくり返したり、配達されて置かれている牛乳瓶を割っていったりポストに入っている新聞紙を捨てたり、上の二人の男の子たちは他人の車の上に乗って(実際に!)放尿するという有様で、これでよく団地内で問題にならなかったと不思議に思うくらいである。たまの休みにプールに連れて行ってもイタズラは収まらず、外国人の出っ張った腹をヘアピンで刺したりするのだが、田上が怒ることはない。田上は子供は自由にすくすくと育てばいいという考えなのである。
父親の不在が原因で学校の先生に「精神不安定児」と呼ばれた子供たちに対して田上が取った行動はイタズラを止めさせるということではなく、とりあえず尻を叩いて父親の批判を止めさせて早朝にランニングをさせて束子で体を洗わせ、小学校一年生の娘に暗にアルバイトを促し、好き嫌いなく食事をさせるというようなことで、完全に的を外しているのである。
それでは本作における「スパルタ教育」とは何を指しているのか勘案するならば、クライマックスにおいて田上の父親の義郎が住んでいる街で、不良たちが家の中までバイクを走らせるなど傍若無人に振る舞い、遊びに来ていた小島雅子を誘拐した翌日、田上がやってきて原和也と共に不良たちを腕力で街から追い出し、その様子を見ていた義郎が、悠三が子供の時に自分が厳しく仕込んだ剣道が役立ったと喜んでおり、要するにスパルタ教育とは戦前の「軍事訓練」を指しているのである。何かが間違っていると思うが、これが石原慎太郎の原作を基にした物語で、彼の四人の子供たちを思い浮かべてみるならば、何となく納得できる。
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