原題:『The Great Escaper』
監督:オリバー・パーカー
脚本:ウィリアム・アイボリー
撮影:クリストファー・ロス
出演:マイケル・ケイン/グレンダ・ジャクソン/ジョン・スタンディング/ダニエル・ビタニス/ビクター・オシン/エリオット・ノーマン
2023年/イギリス
「大物の高齢者」について
反戦映画として素晴らしい作品だと思ったのだが、欲を言えば、主人公のバーニー・ジョーダンとフェリーで知り合ったアーサー・ハワード=ジョンソンが一緒に訪れたバイユー戦没者墓地のシーンにおいて、何故バーニーは本人にはともかく、終戦後にダグラス・ベネットの妻に一度も会いに行かなかったのか理由がいまいちよく分からなかったし、亡くなった弟の墓をアーサーが見つけた時の心理描写も足りないように感じた。
ところで本作は戸田奈津子が日本語字幕を担っているのだが、どうも字幕翻訳が怪しいのである。例えば、アーサーが眠れずにいたら、妻のレネも起きてきたのでアーサーが眠るために「酒でも飲もうか」と翻訳されているのであるが、実際は「俺は走るべきなんだな(I should have run)」と90歳がかました冗談に、妻のレネが「フランスまで」と冗談を被せてくるウイットが面白いのである。もう戸田に字幕翻訳は無理だと思う。大物の高齢者だからといって誰でも良い仕事をするとは限らない。それとも人材不足なのか?