原題:『ルート29』
監督:森井勇佑
脚本:森井勇佑
撮影:飯岡幸子
出演:綾瀬はるか/大沢一菜/伊佐山ひろ子/高良健吾/原田琥之祐/松浦伸也/河井青葉/渡辺美佐子/市川実日子
2024年/日本
「美しさ」で探る「敗者たちの可能性」について
次々と映し出される「画」がどれも美しく「生活音」さえ細かく拾い上げており、それが美し過ぎて多少テンポを犠牲にした感はあるものの、何ならセリフを省いても観ていられるほど美しく、かなり綿密なロケハンをしたと想像する。
令和5年7月14日を中心とした物語は、フィンランドの映画監督のアキ・カウリスマキのような作風が観客を選んでしまうかもしれないが、本作が修学旅行中にタバコを吸おうとした高校生たちから始まり、俗世を離れて生活している「森」の親子の存在と、主人公で清掃員の中井のり子の姉で教師の亜矢子のモノローグからも教育問題が絡んでいるように思う。つまりのり子と、精神を患って入院中の木村理映子に依頼されてのり子が連れてきた娘の木村ハルは二人とも日本の教育制度からドロップアウトした人たちで、本作は「敗者」たちの生きる可能性をファンタジーと共に探って行く物語であり、それはアキ・カウリスマキ監督の作風でもあるのである。