楠町3丁目ではなかなか人に出会えなかった。すんなりと道を尋ねることができない旅人はとりあえず近くの専念寺に入った。ここも人の気配がない。本堂横に吊るされた干し柿が寒風に晒されて粉を吹き始めていた。


専念寺の周辺を徘徊している内に段々嫌気がさして来た。勇気を出して何人かに声を掛けたが、土地勘のない者が道筋を理解するには難し過ぎた。困り顔で同じ道を行き来している時であった。部外者を待ち受けていたかのようなタイミングで年配のおじさんが飛び出してきた。
身の危険を感じた私は後ずさりして柔道の組み手の体勢をとった。しかし、これは取り越し苦労であった。おじさんがポケットから取り出したのはただの素手である(笑)
彼は無言で西の方角を指差した。「あっちに薬師堂があるんですね」と念を押すと彼はニコリともせず頷いた。どうやら町内で横の連絡が入り助け舟を出してくれたようだった。私は頭を下げて教えてもらった狭い道へ入って行った。



専念寺の周辺を徘徊している内に段々嫌気がさして来た。勇気を出して何人かに声を掛けたが、土地勘のない者が道筋を理解するには難し過ぎた。困り顔で同じ道を行き来している時であった。部外者を待ち受けていたかのようなタイミングで年配のおじさんが飛び出してきた。
身の危険を感じた私は後ずさりして柔道の組み手の体勢をとった。しかし、これは取り越し苦労であった。おじさんがポケットから取り出したのはただの素手である(笑)
彼は無言で西の方角を指差した。「あっちに薬師堂があるんですね」と念を押すと彼はニコリともせず頷いた。どうやら町内で横の連絡が入り助け舟を出してくれたようだった。私は頭を下げて教えてもらった狭い道へ入って行った。

