我社は看板屋である。
なので当然カッティングプロッタがある。また、近年になってほぼスタンダードと呼べる存在になってきたと言える大型のインクジェットプリンターもある。
ステッカー屋ではないので平常はあまりホイホイとは受注しないのだが、時々は作る事もある。
この辺に関して能書きをタレてみる。
俺が昔乗っていたDT200WR。この頃はまだ会社員であったが、少しずつシートを貰って帰り、コツコツと殆ど全てを手切りで加工した物。
そもそも俺が看板屋に就職したのは、実はバイクがキッカケであった。バブル期に普及型のカッティングマシンが発売されて(それ以前にもあったのだが、極端に高価であった)、それまで文字を手で書いていた看板屋さんに途轍もない変化が訪れた。なにせ機械に入っている書体を使用すれば、全くの素人でもきれいな文字を製作できてしまうのだ。カッティングシステムは一般向け雑誌等のメディアにも紹介され、高い注目を浴びる事になった。で、脱サラしてカッティングシステムを購入、ステッカー屋や看板屋を始める人が急増。俺が若かりし頃(今でも若い)に看板屋に就職したのは、そんな時代であった。ちなみにこの頃のカッティングシステムはミニマム構成(プロッタの巾が狭く、PCも最低限の物)で200万円程度だったと記憶している。
↑話は逸れるが、手書きの寿司屋の札。最近ではこんな事をやっている看板屋はかなり少数派。
その当時、カッティングマシンを使用しての一般向け商売としては、もちろん車やバイク業界が最大のターゲットの一つであったと思う。実際にバイク雑誌でもカッティングマシンなる物が紹介されており、俺も看板屋に就職する前からカッティングマシンの存在を知っていた。
勿論看板屋に就職しようと思った位なので、物を作るのが好きであり、それまでもクリエイティヴな道を歩んで来ていた。
ホームセンター等で「カッティングシート」が売られており、手作業でステッカーを作っていた。方法は・・・
①原稿を用意。コピー機で資料を拡大縮小するのが楽。手で書いた物でも良い。※追記:肝心な方法を忘れてた。PCでデザインしてプリントアウトした物が一番良いですな。
②デザインボンド(原稿用のスプレーボンド。昔はミツワのペーパーセメントなんてのも使っていたが、若い看板屋さんは知らねえだろうな)で原稿をカッティングシートに貼る。
③デザインカッター(アートナイフ)で剥離紙は切らないように、原稿諸共カッティングシートを切る。
⑤不要な部分をめくる。
④アプリケーションシート(リタックシート。幅広の紙テープでも良い)で文字を拾い、施工面に貼る。
この手順は決まりという訳ではないので、アレンジも可。何ともアナログな方法だが、未だに我社でもやる場合がある。極端に急いでいる時や外現場で製作せねばならない時などはこの方法だ。
ちなみに「カッティングシート」というのは中川ケミカルというメーカーがリリースしている商品名であり、一般的にはこの呼び方が定着してしまったようだが、我々プロが「カッティングシート」と呼ぶと直接「中川ケミカルのカッティングシート」を指す。何故かというとこの商品は「屋内装飾用」だからなのである。
では我々が何と呼んでいるのかというと、単に「シート」とか「マーキングフィルム」、「フィルム」等等・・・。人によっても異なるし、各会社や地域性もあろう。
シートには大別して二種類。屋外用と屋内用だ。この二種類が最も異なるのは糊。屋外用は感圧型粘着フィルム等と呼ばれる事もあるのだが、その名の通り圧力を加えなければしっかりと接着しない。屋内用は救急絆創膏の様な糊で、被着体に触れた程度で接着してしまう。だが夏場で気温や表面温度が上がると糊がダラダラになってしまい、貼っておいた文字がズリ落ちてくる(ホント)。
よく言われる「褪色性(色アセ)」だが、屋内装飾用フィルムでも良質の商品であれば1~2年程度は屋外でもそれなりに使用できる。※車のボンネットとかの条件の悪いところではキビシイ。
もう一つ良く言われるフィルムの厚み。「薄い方が良い」と思われている節があるが、必ずしもそうではない。あくまで「必ずしも」ですゾ。
マーキングフィルムは一層の物、二層の物、三層の物とあり、層が増えれば当然厚みも増す。一層品で大体0.08mm、三層品で0.12~0.18mm(目安値)。薄い方が上からクリヤーを掛ける場合に有利。また、人間の目は非常によくできていて、細かい文字を分厚いシートで製作すると凸文字に見えてしまうのだ。当然分厚いとワックス等が残りやすいし、汚れも溜まる。爪なんかで引っ掛けて痛めてしまう可能性もある。フォーミュラーカー等ではステッカーの厚みも空気抵抗になるのだそうな。ところが、分厚い方が有利な事もあるのだ。例えば下地の隠ぺい力。又は色の深み。この為に三層品なんて物があるのである。
「分厚いと曲面に貼り難いのでは・・・」という声も聞こえてきそうだが、コレはハッキリ言えば「ノー」だ。誤解無きように書き添えれば、全く同質だが厚みのみ異なるフィルムを比べれば、ある意味では薄い方が良いと言える。が、曲面追従性の良否は実はフィルムの製造法の違いに因るところが大きいと言えるのだ。代表的な製造法には二種類あり、キャスト方式とカレンダー方式である。この場では製造法の解説は避けるが、この二種類を比べると圧倒的にキャスト方式で製造されたフィルムの方が柔軟性に富んでいる。コスト高なのはキャスト。我々も一定以上のクオリティが求められる仕事ではキャスト製品を使用するが、近年のカレンダー製品の品質がかなり向上している事もあり、一般的な内容の仕事ではカレンダー製品を使用するのが普通だ。ちなみにキャストはどちらかと言えば薄目の場合が多く、カレンダーは厚目の場合が多いと言える。
マーキングフィルムはその殆どが塩ビ(ポリ塩化ビニール)で製造されている。焼却すると塩素ガスを発生するので、近年は「オレフィン」という素材が使われつつあるが、マーキングフィルムとして使用するには根本的な欠点がある為、本当の意味で素材が入れ替わるのは当分先であろう。
一般的に使用されているマーキングフィルムでも、ミラータイプの物に限っては、一部の例外を除いてポリエステル・アクリル樹脂である。ちなみに絶対という訳ではないが、ミラーやヘアラインのフィルムは樹脂素材には貼れない。物理的には施工可能なのだが、後々問題を生じるケースが多い。マトモな三次曲面にも施工は困難である。それとよく言う「水貼り」は水分が抜けないので基本的には不可。
またウインドウガラスに貼るスモーク等のフィルムは、その殆どがPETである為に曲面追従性が低い。リヤガラスに貼るときに熱線に沿ってカットしてジョイントするが、もしも塩ビであるならば1枚貼りが可能である。
メジャーなマーキングフィルムメーカー・()内は代表的商品。各説明は俺の個人的な意見。
●3M(スコッチカルFILM)
・・・最右翼ブランド品。性能は確かでニーズに合わせた商品が魅力なのだが、独特の販売体系によって価格が高く、コストパフォーマンスに劣る。
●中川ケミカル(タフカル)
・・・国産ブランドの古参。あまり進化していないイメージがある。カラーチャートによるラインナップは非常に便利。
●セキスイ(タックペイント)
・・・建築や設計サイドから現場に参入し、今や完全なスタンダード。環境対策にも熱心。
●桜井(ビューカル)
・・・昔は結構な勢いだったが、時代に合わせるのを失敗した感がある。品質は高いが「スターメタル」という商品以外は特に使う理由が無い。
●東洋インキ(ダイナカル)
・・・正に不景気のお陰でのし上がったと言える。以前は評判が悪かったが、現在は人気が高い。
●ニチエ(ニチエカル)
・・・ここ数年で知名度が一気に上がった。感覚的に東洋インキに近い物を感じる。
●IKC(ルミカル)
・・・プアマンズ3M? アイデア商品が豊富。結構好きだが、突然廃盤にするのは如何な物か。
●ニチバン(ニチカラー)
・・・非常に発色の良いフィルムが多く、根強いファンが多い。
この話、かなり長く続きそうだな・・・。一応要点だけ掻い摘んでるつもりなのだが。
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