THE FOURTH PARTY

チョイ毒エッセイのようなもの。コメント欄でのやりとりはしません。用事がある人のみ書き込んでくだされ。

バイナル・その3

2007-02-26 21:30:19 | 仕事

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↑「バイナル」と呼ぶにはちとキビシイですが…。カマロのGTライン。シルバーの部分をFILMで施工。一見平面に見えるが実は結構三次曲面。アメ車のバイナルはかなり施工経験があるが、何故???撮った記憶はあるのに写真が出て来ない。

正直言って看板業界というのはテクノロジーの進化が遅い
その理由の一つに「単品製作である」という事があると思われる。
「○○商店」とか「ラーメン○○」といったそれぞれに異なる屋号を入れなければならないので、それに対応する為には小回りの利く業者がそれなりの数だけ必要になる。勿論現場の状況も個々によって異なる。つまり施工方法や製作する物、それに対する金額、クオリティやサービス等の一元化や明確化を計るのが著しく困難なのである。従って、各仕事内容を直接比較する事が不可能であり、悪徳業者(笑)の存在も否めない。
現実に一言で「看板屋」と言っても、筆で文字を書くだけで収入を得ている看板屋さんから(最近はほとんど皆無)、最新機器をどんどん導入して目新しさで勝負する看板屋さん、電飾等の一種類に特化してしまう看板屋さん、我社のように何でも屋の様な看板屋さんまで多者多様である。

で、最新機器を導入すると安くて良い仕事ができるのかというと、そうでもない所が問題なのである。規模の大きい物件を全てカッティングで施工したとすると、当然材料代も多く掛かるので見積も高くなる。
例えばその見積が100万円だったとする。お客さんとしてはそこまで予算を掛けられない・・・「何とか50万円でできない物か?」・・・材料はランクを落としてギリギリの所なのでもう無理。ところが我社では50万円でできてしまうのである(金額はあくまで例えばの話)。どうやるのかというと、最も基本的な技術に立ち返り、筆を使った手作業で文字を書くのだ。塗料代などはシート代に比べれば僅かな物だし、事前準備が不要なので工期もかなり短くて済む。業界が不毛化している原因の、典型的な例の一つである。
あくまでこれは単なる一例に過ぎない。他にも、必ずしも新しい物が受け入れられる訳では無い事が数多く存在する。

俺は設備投資には積極的な方なので、最近カッティングに替わってスタンダードになりつつある、溶剤インクの大型インクジェットプリンターも当然のように使っている。
が、正直この機械は「看板屋を堕落させる機械」だ。機械に頼る事によって本来の技術も失いかねないし、これを使ったところで必ずしも質の高い仕事が出来るわけでもない。
当然手作業やカッティングでは表現できない事がいとも簡単にできてしまうので、手法の一つとしては必要なシステムであるが、あくまで本来の技術やセンスを備えた上で機械を稼動させるべきである。街中でもレイアウトやデザインの悪い看板を良く見掛ける。機械があっても技術やセンスがなければ良い仕事はできない。

スミマセン、相変わらず前置きが長い。
さて、俺も随分悪者扱いしているインクジェット(以下IJ)だが、バイクではなんだかんだ言って結構使っている。
オンロードバイクの場合、特にカウルの付いた物では、一部の小僧等を除けば(スミマセン)塗装(ベース塗装)が施されるので、タイヤメーカーやオイルメーカーとか、スポンサーや好きなブランドのステッカーを貼る場合、その殆どの場合はカッティングステッカーの方が向いていると思われる。
オフロードバイクの場合は樹脂部品に直接貼り、装飾としての機能に加えて外装部品のプロテクトを兼ねるケースが多いと言える。故にカッティングタイプよりも、FILMに直接グラフィックが印刷された物の方が向いていると言えるのである。

Shroud

↑俺のXR250のシュラウドのグラフィックの変遷(笑)。上から古い順で現在は一番下。最初からモノクロっぽいのをイメージしただけに、上の二つが気に入っている。嫁さんが「目立たない」というので、ポリシーを曲げてカラフルにしている。

Other

↑その他のグラフィック。「DUNLOP」だけはカッティングで施工。サイドカバーのカーボン調シールもIJで表現してある。一番上のはバーパッド。コレを製作しているバイナル屋さんは少ないだろうと思われる。ターポリン(厚手のビニール生地)に出力後に縫製している。テスト段階であるが、あまり良い結果は出していない。一定以上安ければ売ってもいいかな…。

近年では普及型大型インクジェットの導入が一般化しており、いわば一頃のカッティングマシンの様な存在。バイナルの専門ショップも数多く見受けられる。近所のバイク用品店にも在庫されているが、手にとって見た物は恐らく我社の機械と同じ機械で出力している。グラフィックを印刷する場合、IJではグラデーションや写真の表現が容易であり、物的な版下が存在しない(データが版下となる)ので少量生産が可能というメリットがある。
対して昔からグラフィックキットとして店頭にならんでいる輸入品は、シルク印刷かそれに類する製法にて作られているようだ。シルク印刷は簡単に言えば「プリントごっこ」。(※PCの普及で完全に廃れたと思われる) 一色ずつ別の版下が必要で、グラデーションを必要とする場合はドットによる表現となる。だが、IJに比べると発色が鮮やかで、耐久性に於いてもメリットが大きい。

前出の、近所のバイク用品店に在庫されていた物は、その他の対応車種ラインナップを見ると全てトレールの様だ。で、包装の上からジックリと見た限りでは、一般的なフィルムに出力してある様に見受けられる。
俺のXR250は既にシュラウドのデカールは4セット目、リヤフェンダーのデカールは2枚目。毎回マテリアルを変更してテストしてきた。少なくとも俺がテストした限りでは、我社が仕事で使っているフィルムでは耐久性が今ひとつであった。粘着力と曲面追従性において疑問が残る形となった。一応企業秘密(笑)なのでマテリアルの明言は避けるが、現在使用中の物はそれなりの結果を出している。

ちなみにIJにてデカールを製作する場合や、カッティングでも比較的大きな面積を貼る場合は、事前に型を取って正確な形状に加工する方法と、大き目のフィルムを貼った後にフチをカットする方法とある。
型を取る場合は、俺は透明タイプのリタックシートを貼り、マジックでアタリを付ける。データ化する場合はソレをスキャニングしている。紙で型取りする事も可能だが、透明タイプのリタックシートの方が圧倒的に作業は楽だ。
貼った後でフチをカットする場合、心配になるのはカッターキズである。俺はサラリーマンの頃から「人間カッティングマシン」と呼ばれる程の人間だったので、割りと躊躇無くカッターを入れる。で、全く傷を付ける事無く切れるのかというと、必ずしもそうでもない(爆)。が、実際にはほぼ問題にならないレベル。コツは練習して掴むしかないが、ポイントになるのはカッターの刃をコマメに交換する事。デザインカッターの刃は非常にデリケートで、鈍るのが結構早い。自分では切れ味が良いつもりでも、実は結構切れなくなっている事が多い。良く切れる刃で軽―く切ってやった方が、下地を傷付ける事が少ない。

コメント
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