駐車場に子どもの声がしてきた。時折来ていた家族が友人家族を案内してきた様子だった。
4家族の子ども達7人が、手に手に補虫網と虫かごを持って保全区域に入ってきた。たまりかねて「ここは生物保全の場所」と伝え、理解したうえで遊んでくださいと言ったが、後味が悪い。
トンボ捕りも出来ない子供時代なんて、与えたくもないけれど、現実の生息環境は青息吐息なのだ。知られるにしたがって不快な思いを自他ともに味わうことになるのだろうと覚悟はしていたが…。
新聞に、県版絶滅危惧種「クロツバメシジミ」の生息地の詳細情報が掲載された。新聞の使命だと悪気はないのだろうけれど、小生はため息が出る。至近にあるショウジョウバカマの群落も花期の訪問者で、縦横に道が出来て衰退中だ。引率してくる「インストラクター」とやらも保全の労を取ることは無い。
折々に報道、紹介される生息地や群落地も、結果被害をこうむる事が多いのだろうと、実体験から思わざるを得ない。このフイールドも、ビジネスの集客ポイントになってきたし、どこかで歯止めをしないと、結局、結果責任を負わない人たちが保全に逆行する破壊の一翼を担っていく。意地悪爺さんやるのは、自分にとってもかなり不愉快な事態だが、それは多勢に無勢だけではないのだ。
リンゴ二本の摘果をする。本によれば「ピンポン玉大」が適期なのだそうだが、適期に実施することは稀で気分優先。
今回も、少々早い「サクランボ大」の摘果になった。昨年は摘果をしたが袋掛けはせず、ほとんどが蛾に吸われた傷物になってしまった。
袋はあるけれど、やはり赤くなる様を見たいから、出来栄えは後回しになる。もともと贈答品でも販売用でもない、庭木なのだ。ピンポン大になった摘果リンゴは、もったいないからとピクルスにしたことがあったが、それほど美味しくはなかった。
樹下に落ちたままの摘果した青りんごは秋まで青さを保って腐らない。虫もかじることをしないから、忌避成分があるのだろうか…。摘果したリンゴの怪である。
元通り夢想はしないこれからは新たに築く赤子の一歩
戻りたい戻れない地と覚悟して自分で決めたもう戻らない
出口なく地域のすべて仮置き場仮の住まいに身を置く仮世
子のために親のためにと生き別れ生きていてこそまた来る朝
駐車場南側斜面の整備を始めた。棚田に残した除伐樹枝葉の後始末はO氏に委ね、至近の場所に手を付けたのである。ここも担当区域ではないけれど、整備に入るグループも人も居ないので荒れるがままになってしまった。
斜面を登ると尾根道があるが孟宗竹や常緑樹が入り込み歩きにくい。眺望は無いけれど、竹林や広葉樹林の感じは良い尾根筋なのである。旧来からの道だから入り込むルートはあるのだが、駐車場からは遠回りになる。
そこで駐車場から直接のアプローチルートを開こうと思い立った。まずは支障となる倒木を処理し、いつ倒れるか油断できない立ち枯れ木を排除し、出てきた材を浸食溝に積み上げ、危険な深さを減ずる事からが手始めだ。
放置されていたから、土壌の保水力が下がり、地表流が増え浸食が広がってしまった。深い溝は落差が2mもある。とりあえず深い部分に処理材を集積する事で落下のリスク軽減を図る。
水見回りで泥水地をまわっていたら、上段の田圃に異変がある。更に一段上からの漏水が尋常ではないのだ。出水箇所に泥土の塊も見て取れる。理由は確認せずとも判別した。別グループの管理区域にあるビオトープからの漏水なのだ。
年明けの頃に耕盤陥没を起こし埋め戻した近くである。今回も幼児が引き込まれるほどの竪穴に続き斜坑 が続いている。「掘り上げて土嚢を押し込み埋め戻す」しかないと、アドバイスしておいたのだが実施されずにいる。
次の月例会は10日後だが、この補修作業を行うとは、経験則から考えられないので、またまた余計な手出しをした。60㎝ほど掘り下げ、耕盤下の漏水穴の底から土嚢を押し込み踏み固め、土を戻した。応急処置であるが、掘り下げるのは腰にきつい。
耕盤穿孔はV字浸食につながる重大事態でも、考え方が異なれば対応も評価も異なるのが、任意のグループによる里山保全の現実で、部分最適と全体最適化の調和は難しい。
「愛媛 愛」の場合は、小生より土壌や植物が喜ぶ、いわゆる「菌パワー液」なのだ。
ヨーグルトの乳酸菌、イースト菌、納豆菌を砂糖液で発酵培養して完成する、通称「えひめAI」であるけれど、小生は加える液体は水でなく、昆布だし汁か米のとぎ汁を使う。更に糀菌をも加えるところがミソなのである。もう掛け値なしの「合コン状態」と言ってよいだろう。
今年はこれで、トマトの病気の予防ができるか試してみる。庭の一角に夏野菜としてトマト栽培をしても、連作の影響もあるのか、うまくいかないのである。巡り巡って「美味しいトマト」になれば良い。
普段、「合コンの好菜相手」は、発酵学の権威「小泉博士推奨」の「香寿 ツケ」であるが、ぬかみそ程の美味しさが出ないのが不満、だが「扱いやすさ」ではぬかみその比ではなく、目移りする。じゃじゃ馬でも控えめでも、それなりに魅力がある。
これら「交際相手」との仲立ちをするのが「ヨーグルトメーカー」だけれど、最近、発酵時間と発酵温度を調整できる品を見つけて購入した。これで菌類との付き合いが楽になった。電気炊飯器の保温機能とは比較にならぬ容易さなのだ。「歩」でも「ト金」に変える力は「ト金は菌なり」であるが、容易にするには「時は金なり」に他ならない。
「好菜」とすべきところを「交際」に替えてみた。年甲斐もなく「ウフフ」の内容に見えてしまう。
庭でジャコウアゲハの孵化が始まった。ここかしこに散らして産卵しても、入れ替わり何頭も産卵に来るから五個も卵がある葉もある。狙う葉にも適否があるようだ。
例年のことながら、終齢幼虫になるまでには食べつくされてしまうので、今年は10mmほどに育ったら、一部はフイールドのウマノスズクサに引っ越しさせるつもりである。
庭のウマノスズクサも保護しながら、10本以上に支柱を立てているが、ほどなく茎まで食べ尽くすのが繰り返されている。それでも今年は珍しく、背丈よりも蔓が伸びている。しかしながら、ツルの伸長の良い株は葉が少なく、葉の多い株は成長が悪い。
肥料をやるべきか否か、頭上のリンゴにはアブラムシが付きだしたから、ゴミ袋をかぶせてから薬剤を撒かねばならず、とかく小さきものは手がかかる。とは言え、小父さんの「ちょっとした楽しみ」でもあるのだ。しばらくすると、山椒や三つ葉も坊主になるが、これも仕方ない…。
松毬を踏んで聞き行く春の蝉
山笑うタゲリ一声谷田の空
オオルリは誇らしく鳴く大ヒノキ
コジュケイの五月蠅き頃となりにけり
ツツドリの田楽と聞く棚田かな