これまで気ままに「イージーリスニング音楽」「ムード音楽」について、思いついたことを記してきた。
ところが、中には私の事実誤認もあり、「PMイースタン」さんからは、親切なご指摘をいただいた。(フランク・プウルセルは来日公演をしたことがない、と書いたが、それは誤りであることを教えていただいた。)
そこで、きょうは真面目に手許に本を置いている。
「ビルボード・トップ40アルバム 1955-86」(ジョエル・ホイットバーン編 音楽之友社 1989年)という本で、アルバム(=LPレコード)のチャートが記録されているところがミソだ。
ポップス、ヴォーカル、ジャズ、クラシックまでも含んだチャートなので、インストルメンタル系の音楽は、思いのほか“苦戦”していることが分かる。
また、日本では有名な楽団、例えばフランク・プウルセル、レイモン・ルフェーブルといった名前が出てこないのだが、米国ではほとんど人気がなかったことを示すデータに他ならない。
【ヒット・アルバム・チャートのゴールド・ディスク&プラチナ・ディスク】
●→ゴールド・ディスク(50万枚) ★→プラチナ・ディスク(100万枚)
( )内の数値は、チャート・インしたアルバム総数
レイ・コニフ 8● 1★(28)
ビリー・ヴォーン 3● (18)
ローレンス・ウェルク 2● (24)
ロジャー・ウィリアムス 4● (19)
パーシー・フェイス 2● ( 9)
アンドレ・コステラネッツ 0 (1)
ヘンリー・マンシーニ 4● (16)
イノック・ライト 1● (11)
アーサー・フィードラー 0 ( 6)
ベルト・ケンプフェルト 3● ( 6) ※ドイツ
マントヴァーニ 6● (30) ※英国
スタンリー・ブラック 0 (2) ※英国
フランク・チャックスフィールド 0 (1) ※英国
ジョージ・メラクリーノ 0 (2) ※英国
ポール・モーリア 1● (1) ※フランス
101ストリングス 0 (2)
《参考》
ザ・ビートルズ 21● 2★ (27)
エルビス・プレスリー 20● 2★ (49)
このように見てくると、アメリカ以外のアーティストで大成功を収めたのは、ベルト・ケンプフェルト(ドイツ)とマントヴァーニ(英国)だけだということが分かる。ポール・モーリア(フランス)は、「恋は水色」のシングル盤が大ヒットしたおかげで、アルバム・チャートにも1枚がチャート・インしてゴールド・ディスクを得ているが、米国の音楽市場では単なる「一発屋」で終わってしまった。
「引き潮」「ライムライト」で有名なフランク・チャックスフィールド(英国)もポール・モーリアと同様の有様、「スペイン!」がヒットしたスタンリー・ブラック(英国)も2枚のアルバムがチャート・インしただけである。
日本では、人気のある「アルフレッド・ハウゼ」「ウェルナー・ミューラー」(以上ドイツ)「レイモン・ルフェーブル」「フランク・プウルセル」などは、1枚のアルバムもチャート・インしていない。
イージーリスニング音楽に関しては、日米の好みの違いが、はっきりと現れているのが興味深い。