【ミスミソウ咲き始める】
イスラエル最高の文学賞、エルサレム賞が2/15、作家の村上春樹氏に贈られた。
「文藝春秋」4月号で、村上春樹の『独占インタビュー&受賞スピーチ 「僕はなぜエルサレムに行ったのか」』を読んだ。
有名になった「壁と卵」のスピーチ全文を英文と和訳を見比べたりして静かに読んだ。素晴らしい内容だ。授賞式がイスラエルのガザ攻撃の時期とも重なり、周囲からは辞退の勧めがあり、本人も悩んだようだが、彼の言うように「受賞を断るのはネガティブなメッセージ、出向いて授賞式に話すのはポジティブなメッセージ」になったと思う。
【心に残ったスピーチ】
○熟考のすえ、最終的に私はここに来ることを決心しました。私がここに来ると決めた理由のひとつは、あまりにも多くの人々が「行くべきでない」と言ったことです。・・・ 私は立ちすくむよりもここに来ることを、目を反らすよりも見つめることを、沈黙するよりも語ることを選びとりました。
○個人的なメッセージを送らせてください。これは私がフィクションを紡ぐ時、常に心に留めていることです。私はそれを一枚の紙切れに書いて壁にはっておくというよりもむしろ、私の「心の壁」に彫りつけられていること……それはこういうことです。
"Between a high, solid wall and an egg that breaks against it, I will always stand on the side of the egg."
「もしここに高く、固い壁があり、そこにぶつかれば割れてしまう卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます。」
○このメタファーはいったい何を意味しているのでしょうか? それはいくつかの場合において、とてもクリアで単純です。高く固い「壁」とは、爆撃機であり、戦車であり、ロケット砲であり、白リン弾です。そして「卵」とは、それらに壊され、燃やされ、撃たれる非武装市民……、これがそのメタファーが意味することのひとつです。
○私たちひとりひとりが、多かれ少なかれ「卵」なのです。私たちは唯一かけがえのない魂を内包した、壊れやすい殻に包まれた卵なのです。これは私にとっての真実であり、皆さんにとっての真実でもあります。そして私たちはそれぞれ――多少の違いはあっても――高くて固い壁に直面しています。その「壁」の名は、そう、「システム」です。
○僕が小説を書く理由は、ひとつしかありません。それは個々人の魂の尊厳を立ち表わせ、光りをあてることです。
○今日、皆さんにお伝えしたかったことはただひとつです。
私たちは誰もが人間であり、国籍や人種や宗教を超えてみんな一人一人の人間です。システムという固い「壁」に直面する「卵」だということです。・・・私たちにはそれぞれ、手に取ることが出来る生きた魂がある。システムはそれを持っていません。
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最近、アメリカの救世主、オバマ大統領の演説を聴いた。今スピーチを読み終え、改めて「言葉の力」を再認識させられている。
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