心待ちにしていたアイが今年も咲き始めた。もう20年にもなるか、川俣の染織家山根正平先生からいただいたアイが、いつしか庭一面に広がった。
花穂は控えめに背伸びして紅に染まっている。隣に生えている仲間のイヌタデより、葉は丸みを帯び、りんとした清楚なたたずまいがとても爽やかに感じられた。
傷んだ葉が、当然ながら藍色に枯れている。古人はこの興味深い事実から、試行錯誤を繰り返し藍染めを確立したのだろう。やがて化学技術がその色の素を突き止め、石油から色素インジゴを合成した。伝統文化と科学技術の一つの関わりを思った。
時折風にそよぐ可憐な小花を眺め、達治の詩を思い浮かべた。
「かえる日もなきいにしへを そはつゆ草の花のいろ はるかなるものみな青し 海の青はた空の青」
そしてアイの葉の奥に、海や空と違った、はるかな歴史やこころを秘めた青色を思いながら、「はるかなるものみな青し」と呟いた。
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