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昭和史研究の第一人者と言われた半藤一利氏が亡くなられたのが1月。
その翌月に出版されたこの本。
絶筆となった「あとがき」が収録されている。
半藤氏のエッセイ集である。
タイトルがいい。
「歴史探偵 忘れ残りの記」
自らを「歴史探偵」と称していたから、それが付いているのもいいが、「忘れ残り」という言い方が何とも粋だ。
「忘れられずに残っている記憶を書いたもの」
というような意味だろうか。
この本のエッセイの大半は、もともと、文藝春秋社の営業部が毎月出していた「新刊のお知らせ」というパンフレットに連載したコラムから集められたものだそうだ。
それを、文春新書の編集部が、テーマ別にまとめてみたものを半藤氏が気に入って、6章それぞれにタイトルを付けてできあがったということだ。
昭和史や太平洋戦争を生涯のテーマとしている氏なので、戦争関連のエピソードは、読者が知らないことがさらりと書かれている。
そのことに、ひたすら感心して読んだ。
また、戦時中の自身の体験に関するところは、具体的な事例が書かれてあるので、いかに戦争が非人間的な間違った行為であるか、ということを教えてくれる。
最後の章は、文藝春秋社が銀座にあったことから、入社当時からの銀座の様子や思い出が綴られている。
今はもう知る人もいなくなっているだろうから、若かったころのエピソードについても貴重だ。
特に、銀座の変遷の様相を経験をもとに語れる人は、本当に少なくなっているだろうから、貴重なことを読ませてもらった気もする。
ただ、私自身は、東京で大学生活を送ったときは金のない学生だったので、銀座とはまったく無縁であったけれども。
文章は、もともとがコラムのものだったので長くなく、読みやすかった。
俳句やユーモアを交えた文章には、氏の知性がたっぷり感じられた。
8月の今月は、戦争が終わった月。
だから今度は、半藤氏の名著「日本のいちばん長い日」を読んでみようと思っている。