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仕事をやめて、いらなくなったものに、カバンのいくつかがある。
仕事で使っていたカバンにも、その時代に応じていろいろなものがあった。
カバンが小さいので、毎日風呂敷で包んで持って行ったときもある。
その風呂敷代わりに使うように、たくさんの文書類が入るようなものを使った時もあった。
パソコンを使うようになって、ノートパソコンが入るタイプのものを使った時もあった。
新しいものを買い求めたのは、使っていたものが劣化して穴が開いたり、ファスナー部分が壊れたりしたときだった。
だが、壊れたものは、自分の分身のような気がして、簡単に捨てる気にはなれなかった。
だから、押し入れの棚に押し込んだままのものが多かった。
壊れているし、もう使わないと分かっているのに。
退職したし、体の動くうちに断捨離作業は行わなくてはいけない。
だから、押し入れの中に眠っていたカバンたちともサヨナラすることにした。
処分するうえで大変なのは、カバンに付属している金属部分である。
ゴミとして処理するときには、燃えるものと燃えないものに分けなければならない。
だから、金属部分をはぎ取るなり切り取るなりする必要があった。
ハサミやペンチやカッターナイフなどを準備して、カバンを解体したり金属部分を切り取ったりする作業を行った。
これが意外と大変であった。
古いものほど、がっちりしていてしっかりした材料が使われ、壊れにくくなっていたのである。
そこに、今の時代とは違う、商品づくりに対する心構えが伝わってきた。
売るからには、よい品物を作り、提供したい。
簡単に壊れてしまうようなものは、絶対世に出さないぞ。
そんな信念が、カバンから伝わってきた。
だから、燃えない材料で作ってある部分を解体して取り出すのはなかなか厳しかった。
ノートパソコンも入れられるタイプのものが新しく出たときのカバンは、特に壊しにくく、その頑丈さには驚いた。
外側にかたく太い針金で、カバンの形が作られていた。
持ち手の付近は、硬くて厚みのあるプラスチックで型崩れしないようになっていた。
底の部分には、木材も使われており、プラスチック、針金とともに、変形したりショックを与えたりしないように工夫されていた。
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解体と金属部分の削除に時間がかかり、汗がダラダラとたれてきた。
だが、自分が使っていたカバンは、高価ではなかったがよいものを選んでいたのだなということや、作る側の人がとても心こめて作っていたものであったということが、廃棄するこの期に及んで発見することができた。
過去に仕事をしていた自分と、その自分を支えてくれていたカバン。
なんだかとてもいとおしい気分になった。
お世話になったね。
本当にありがとう。