スポーツを見るのが好きなのは、それが真剣勝負の世界だからに相違ない。
生まれる結果は、決められたものではなく、どうなるかわからないから、ドキドキして見守ることが多い。
勝者があれば、必ず敗者のも生まれる。
勝負の世界は、厳しく残酷だなあと思う。
パリ五輪が始まって、テレビなどでその中継を見ることが増えたから、なおさらその実感がある。
今日でいえば、柔道女子52キロ級の阿部詩選手の敗戦。
リードしていたのに、一瞬の間に相手の技を食らい、一本をとられ逆転負け。
号泣して泣き崩れ、敗戦を受け入れられず、立ち上がれない詩選手の姿。
観客たちは、健闘した詩選手を思い、「Uta,Uta」と励ましの声と拍手を送ったが、彼女を立ち上がらせるには至らなかった。
ここまで、自分の生活を五輪の金メダルのためにかけてきたのだろうし、自分を支えてきてくれた人たちを裏切るような結果になってしまったのは、本当に受け入れがたかったのだろうな、ともらい泣きしそうになった。
勝つ者がいれば、負ける者がいる。
それは知ってはいるけれど、負けた者には味わいたくないつらい思いを味わう。
せつないな…。
だけど、負けた者は、自分の力で立ち上がるしかない。
次の試合でがんばれ、とか、まだ若いから次にチャンスがある、などという言葉は慰めにはならない。
すべて、自分で自分の思いに折り合いをつけて乗り越えるしかないのだ。
詩選手も、自分で乗り越えていくしかない。
今日が千秋楽の大相撲でも、厳しい場面を見た。
横綱照ノ富士は、本割で大関琴櫻に敗れ、2日前は2差で圧倒的に優位に立っていたはずなのに、連敗して優勝決定戦にまでもつれ込んでしまった。
横綱なのに連敗なんて。
しかも、優勝決定戦の相手は、前日敗れている隆の勝。
隆の勝は、連勝して優勝決定戦に進出したから、乗っている。
横綱の権威を損なうわけにはいかない。
照ノ富士は追い詰められた気持ちだったはずだ。
だが、決定戦では、隆の勝の当たりを横綱らしく受け止め、流れの中で逆転して、見事に勝利。
10回目の優勝を果たした。
そこには、今まで様々な試練を乗り越えて作ってきた、照ノ富士関の真の芯の強さを見た気がした。
勝負の世界は厳しく残酷だ。
だけど、試練を乗り越えた先に、真の栄光があると信じて、皆、闘い続けているのだろう。
それでも、負けることもある。
それも人生。自分で乗り越えていくしかない世界…。